観客は映画を観ながら、目の見えていない感覚も同時に味わい、ゆえに恐怖をひしひしと感じます。
これ程真の暗闇を使用した映画は、類を見ないのではないでしょうか。
明確な伏線が面白さを上げる
劇中には多くの伏線が存在しています。そしてその伏線はいずれもわかりやすいのが特徴です。
時を経た今でも多くのファンに戦慄を与える「暗くなるまで待って」に張り巡らされた伏線とは一体どのようなものでしょうか。
逃げ場がない
劇中では、スージーが逃げ出すことが出来ないという緊迫した状況を事前につくり上げています。
- スージーの部屋(半地下)の上は空き部屋
- 2階に住むグローリアの両親は不在
- 3階の住人はスキー旅行のため不在
- 大家は冷蔵庫の修理から逃げており不在
- 裏口はない
上記の伏線は犯人達の会話や、劇中に映るAPARTMENT FOR RENTの張り紙、夫婦の会話から読み取ることが出来ます。
じわじわと追い詰めていく伏線が実に見事です。
壊れた冷蔵庫
冷蔵庫はロートンとの戦いで観客をぞっとさせるアイテムですが、序盤でしっかりと伏線が張られています。
サムは壊れた冷蔵庫のコンセントを抜くようにいい残しますが、スージーはコンセントを抜きませんでした。
この時コンセントを抜いておけば……と観客にじりじりした思いを与えます。
私を見ている?
序盤でスージーがいった「私を見ている?」というセリフ、何気ないセリフですがこれもしっかりと伏線となっていました。
スージーは犯人に写真の定着剤をかける前に「私を見ている?」と確認しています。
この定着剤(チオ硫酸ナトリウム)は目に入れると失明するほどの劇薬です。
さらりと使用されていますが、かなりの反撃だったといえますね。
世界一出来る盲目の女性
セリフの伏線としては「世界一の盲目の女性」というセリフがあげられます。
字幕版では詳しく訳されておらずわかりにくいですが、スージーは英語で下記のようにいっています。
Do I have to be the champion blind lady?
引用元:暗くなるまで待って/配給会社:WB7
直訳してみると「世界一の盲目女性にならなくてはいけないのか」といっています。
だからこそ、スージーは犯人に褒められた時に自分は世界一なのかと聞き返したのです。
部屋の中を見逃さないで
「暗くなるまで待って」は部屋の中という限られた場所が舞台となっています。
冒頭で出てくる部屋のアイテムたちは、それぞれが伏線といっても過言ではありません。
2度目、3度目に観る際はあのアイテムが後で使われたな……と確認しながら観るのもいいですね。
受け継がれる名作映画
「暗くなるまで待って」は派手なアクションはありませんが、じわりじわりと迫る心理的な恐怖が冴えわたる映画です。
オードリー・ヘプバーン主演の本作品公開後も、世界中の舞台で上映される作品となっています。
スージーの涙やロートンのサングラスの意味など、深く考察し何度も観返したい作品です。
やはり名作は長く愛されるものなのですね。