まるで自分の人生と性格は「ピノ・ノワール」のようだ、と言っているような感じなのです。
ここで観客は理解するでしょう。マイルスはピノで、ジャックはカベルネであることを。
またマヤはピノでステファニーはカベルネ、とみても良いのではないでしょうか。
マイルスは自分の性格ゆえにピノに惹かれている、逆にいえばピノの性格に縛られてしまっているとみることが出来るでしょう。
負け犬
人は誰だって
物語を作り出す4人は、いずれも過去と現在にキズを負っています。マイルスは2年前の離婚から立ち直れません。
ジャックは結婚を来週に控えていはいますが、この結婚が本当にいいのか迷う気持ちがどこかにあります。
マヤも離婚を歴て次のステップに立つべくもがいています。ステファニーもまた小さい娘をかかえ人生の岐路にありました。
でも人は誰しも長い人生の間には挫折するのが当然で、ずっと負け犬のままでいる必要はないのです。
ロードムービーとしての楽しさ
サンディエゴからロサンゼルス郊外へ
マイルスが暮らしているのはカリフォルニア州の南部、サンディエゴ。大学のクラスメイトであるジャックが住んでいるのはロサンゼルスです。
二人はジャックの結婚記念とマイルスの小説出版前祝いを兼ねてワイナリー巡りとゴルフ三昧の(ジャックにとってはナンパツアー)旅にでます。
ドライブするクルマはマイルスの古い赤のサーブのカブリオレ。ピノ・ノワール的な選択なのでしょうか。
サンディエゴからロサンゼルスへ。そしてワイナリーがあるサンタ・イネス、サンタ・マリアというエリアへ北上。ハイウェイ101号線を進みます。
二人が合流してまず立ち寄ったのはマイルスの母親が住むオックスナードという街です。次に向かったのがサンタバーバラ郡でした。
そしてソルヴァングという街に入りマイルス行きつけのレストランへ。ここで働いていたマヤと出会うのでした。
カリフォルニアワインというとサンフランシスコの北にあるナパやソノマが有名です。
谷間に位置するナパやソノマと違いロサンゼルスから小一時間ほどのサンタバーバラ郡は広々とした平野で海も割と近い場所です。
ここを舞台に繰り広げられるドラマは「人生のキズを引きずった大人」たちの1週間に広々とした空間を与えています。
またカリフォルニアの乾いた空気感が映画をベタベタした感じから遠ざける役割を果たしています。
オープンカーを使った開放的な(「脇道=サイドウェイ」いっぱいの)道中を眺めることで本作はロードムービーしての楽しさも味わうことが出来ます。
音楽もステキ
カリフォルニアが似合うジャズ
大人の恋、ワイン、カリフォルニアの空気、コミカルなテイスト、これらの味わいを壊さない音楽がこの映画には必要でした。
そこで監督が音楽担当に指名したのは長い付き合いのあるイギリス人のロルフ・ケントです。
彼は物語の内容や空気感を壊さないように、少し時代を感じるような軽めのテイストを持つジャズで全編を覆うことを考えました。