出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00006G2P2/?tag=cinema-notes-22
ハル・ベリー主演の「チョコレート」は2001年に公開された話題作です。
ロマンスの甘い香り漂う映画と思いきや、黒人差別への痛烈なメッセージが秘められています。
夫の命を奪ったハンクへ微笑みかけたレティシアの本心は……。
今なお残る黒人差別にレティシアが何を感じていたのか。
チョコレートという甘いタイトルに隠れたアメリカの闇に迫る映画を徹底考察していきます。
原題はMonster’s Ball
原題と邦題が大きく違う映画は幾つかあります。
この「チョコレート」という映画もそのひとつで、原題は「Monster’s Ball」です。
Monster’s Ballという言葉は日本では馴染みのないものなので、邦題が大きく変えられたのです。
しかし、原題のMonster’s Ballを深く知る事で、映画の見え方が大きく変わります。
原題の方がローレンスの死を強調した
Monster’s Ballは直訳すると怪物の舞踏会です。
死刑囚が刑を実行される前夜に看守たちが行う宴会を意味し、死刑囚を弔う前夜祭のことです。
原題に視点を置くと、死刑囚であるローレンスの刑執行によって人生が大きく揺らぐ人々の物語といった所でしょうか。
看守という立場
アメリカでも問題視されている死刑制度は、その5割弱が南部で執行されています。
そして死刑を執行する看守たちも大きなストレスを抱えているのです。
事実、20世紀に入ってからも死刑執行人の自殺が多く、ストレスの為人格が壊れる人がほとんどです。
看守たちはストレスに侵され、ソニーのように死刑執行前に気を失ってしまう人も少なくなかったといわれています。
ソニーがひ弱だったのではなく、死に対してハンク達が麻痺していたといえるのではないでしょうか。
レティシアの微笑みが意味するもの
ラストシーンで、レティシアはハンクが夫を殺した看守であることを知ります。
ハンクの「上手くいく」というセリフがなんとも切ないシーンです。
ここでレティシアの見せる微笑みが何を意味するのか、と話題になりました。
全てを受け入れて前へ進もうとする
レティシアの微笑みには、様々な解釈が存在します。
観る者に結末を託すといった製作者の意図がうかがえる作品なのです。
ひとつ目は、彼女は全てを受け入れ前に進もうとしているという意見です。
レティシアは、庭の墓を見つめながらハンクの過去にあった辛い出来事を噛みしめています。
おそらくこの3つの墓はソニー、自殺したハンクの母親、ハンクの妻のものでしょう。
彼女はチョコレートアイスを口にしながら、人それぞれに超えるべき過去があることを思っているのかもしれません。
またひとつ超えるべき過去に直面し、今度はハンクとふたりで超えていけると微笑んだのです。
ハンクの優しさを再確認した微笑み
ハンクはレティシアの夫ローレンスを自分が処刑したことを知っていました。