当時の稚拙な経年変化メイクを差し引いても、ワイルドでシャープな印象が見え隠れし、昨今の不良中年の原型と断言できます。
ジェームズが事故に遭わず生きていたら、本当にこういう年の重ね方をしていたかも…と想わせられます。
今でも充分通用するような立ち振る舞いやワードローブは、必見で、要注目です。
また、かつての雇い主の妻を自宅に招いてさり気なく本心を告げ、その後、彼女の娘からのモーションも軽くいなす場面は、必見です。
もちろん、それだけではありません。
自身の企業の大成功を祝うパーティなのに泥酔し、スピーチもできず酔い潰れてしまい失態を晒す場面は、彼の長年の孤独感を表現した、逆に強烈な印象でした。
本当に公開寸前の事故死が惜しまれます。あともう何カットか、盛り上がるエピソードがつけ加えられたかもしれません。
麗しのエリザベス・テーラー
スターダムを確立した作品
彼女は撮影当時は23歳。子役としてデビューしましたが、今ひとつパッとしない、ブレイクもできない日々を過ごしていました。
「陽のあたる場所」(1951年)で高く評価されたものの、伸び悩んでいた時期だったのです。
本作での彼女は、若い頃の姿に一際目を奪われます。本人は年齢を重ねても、言動にブレがない役どころでした。
自分が納得がいかないと、頑として譲らずに夫のジョーダンとの喧嘩も辞さない強さも持っていました。
今なお根治できない社会問題である男女差別や人種差別にはひときわ敏感で、敢然と立ち向かいます。
終盤、レストランでメキシコ人の嫁が差別され、ジョーダンが体を張って抗議した後も手放しで絶賛し、夫を褒めたたえていました。
2人の娘がジェットに惹かれて、両親が止めなければ婚約もしかねない勢いだったのは、「血は争えない」点だったのかもしれません。
若きデニス・ホッパー
実は映画デビュー作だった
後年の出演作での凄味こそ芽生えていませんが、実はビッグの息子役で登場しているのがデニス・ホッパーです。
撮影直前の1955年、テレビドラマでの演技を評価されて、ワーナー・ブラザーズと契約を結んだばかりでした。
メキシコ人と結婚し、ジェットの美容室で妻が差別を受けたことに怒って、看板を滅茶苦茶にしたり…。
侮辱された仕返しにパーティーの最中に、ジェットに殴り掛かって逆にやられてしまったりと、冴えない場面ばかりでしたが…。
後年のインタビューでも、キャリア初期の事はさほど多くは語っていません。
若い頃からきっとジェームズ・ディーンとの事も訊かれ尽くして、本人もうんざりして話題を封印していたのかもしれません。
2人は撮影中に意気投合したといわれますが、どんな話をしていたのか、その場に居合わせたかったですね。
作品の影響と現代の評価
大河ドラマの原型の一つ
最近は、ここまでの長いスパンでの作品は少なくなりました。
演出上も、さすがに今では目新しさはありません。前述通り「ドメスティック・リアリズムの傑作」との評価が定まっています。
大家族の長い変遷を辿っている、という点は、「ゴッドファーザー」などにも間接的に影響を与えているかもしれません。