出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07SVF8222/?tag=cinema-notes-22
「映画ドラえもん のび太の月面探査記」はドラえもん劇場版シリーズ第39作目となる作品です。
本作の脚本は小説家の辻村深月さんが担当しました。
辻村さんは自身の作品にも影響を受けている程ドラえもんの大ファンだそうです。
まさに辻村深月さんとドラえもんとの縁が生み出した作品といえます。
それでいて科学的根拠のもと練られたストーリーが特徴で、感動に深みを与えているといえるでしょう。
そのドラえもん愛に溢れる映画への思いや、リアリティへのこだわりについて解説していきます。
辻村深月のドラえもんへの愛
幼い頃から藤子・F・不二夫作品に親しんできた辻村深月さんは、自身の作品でもSF(すこしふしぎ)を書いてきました。
数多くの小説を書いてきた辻村深月さんの作品の中に、実はドラえもんと深い繋がりのある作品があるのです。
辻村作品とドラえもんとの繋がり
「凍りのくじら」という辻村さんの著作があります。なんとこの作品、章の題名がドラえもんに登場するひみつ道具の名前になっているのです。
第1章:どこでもドア、第2章:カワイソメダル、第3章:もしもボックス…と、全ての章にひみつ道具の名前を付けています。
辻村さんのドラえもんへの愛がうかがえる作品です。
ドラえもん好きが親しみやすいストーリー
脚本を担当した辻村さんは、ストーリーについてこう語っています。
「最終的に藤子先生の原作に立ち返れるような物語にしたいということ。
そのため、ひみつ道具も(中略)すでに原作に登場しているものを多く使うようにしました。」
引用:https://www.shosetsu-maru.com/doraemon/tsujimura
月に行く“どこでもドア”やカグヤ星でも言葉が通じるように、と宇宙船で食べる“ほんやくコンニャク”などお馴染みのひみつ道具たち。
よく目にするひみつ道具が登場すると、見ている私たちもすぐストーリーに馴染むことが出来ます。
ひみつ道具の他に“ドラえもんあるある”も随所に登場し、辻村さんのドラえもん愛が感じられました。
宇宙船でしずかちゃんがお風呂に入ったり、アルとジャイアンが“声”をきっかけに親しくなるなど、ドラえもん好きが楽しめる場面です。
こうした工夫もあり、ドラえもん好きによる、ドラえもん好きのための、王道のドラえもん映画という内容になっているといえます。
シーン別に見る異説・定説の役割
映画の中で登場する異説・定説を理解すると、ストーリーでの役割が見えてきます。
地動説と天動説
のび太以外のクラスのみんなは、月にウサギがいる=異説だとする考えです。
今の世界では地動説が定説だけれど、以前は天動説が定説でした。
定説が正しく異説が間違いということではないと解りやすく伝えるため登場しているといえるでしょう。
- 地動説…宇宙の中心には太陽があり、地球・月・星は太陽の周りを回っているという考え
- 天動説…宇宙の中心には地球があり、太陽・月・星は地球の周りを回っているという考え
月の裏文明説
月の自転と公転の周期が地球と同じなので、月はいつも表側しか地球に見せていません。
月の裏側は地球からは確認出来ないことから、「月の裏文明説」が考えられました。
月の裏には空気があり、生き物が住めるという異説がきっかけで、のび太とドラえもんは月の裏にウサギ王国を作ることになります。
物語を大きく動かし、ストーリーの中心となる異説です。
エスパルは伝説上の生き物で、僕らと同じ人間説
映画の中に登場するカグヤ星の異説です。
クライマックスで唱えられるこの異説は、エスパルの生き方を変える重要なものだといえるでしょう。