親しみのあるエピソードと絡めて描くことで、ストーリーにより入り込めるように作られていました。
また、見ている私たちも実際に想像の世界を思い浮かべやすくなります。
日常と想像の世界を繋ぐことで見えてくる、想像力に働きかける効果を探っていきましょう。
転校生のルカが来る場面
転校生が来るという点では、学校生活で見られる日常=リアリティのあるものです。
しかしルカに何やら不思議な力がある、という描写を加えることで日常と不思議が地続きになります。
どこでもドアが破壊され、月まで宇宙船で行く場面
この時、月までは40年かかる、というドラえもんの台詞から“リアリティ”を感じます。
そしてワープを使えばすぐだ、というモゾのセリフから“不思議”を感じられるのです。
ピンチの元であった“リアリティ”が“不思議”の力によって解決される、想像力をくすぐられるシーンでした。
カグヤ星が光を取り戻す場面
カグヤ星が光を取り戻すためゴダール博士が残したものは、ルカにとってはのび太の“おやつ”と一緒でした。
この場面では、のび太の日常にもルカの住む月にも同じものがあると教えてくれます。
それは、自分たちのために誰かが準備してくれていたものの存在でした。
全く違う日常と想像の世界が、その存在により繋がりを持つ瞬間です。
想像力というテーマに込めたメッセージ
本作での大きなテーマといえるのは、 “想像力”。登場する異説・定説も、想像力によるものであるといえます。
想像力により月へ行ったのび太たちの冒険には、どのようなメッセージがあるのでしょうか。
人間が作り出すもの=想像力の使い方
カグヤ星を荒廃させた原因となったのは、破壊兵器の開発でした。
カグヤ星のボス・ディアボロが力を誇示するためのこの開発は、元を辿ると人工知能という人間が作り出したものが発端にあるといえます。
以下のディアボロの台詞は、とても印象深いです。
想像力が破壊を生み出した
引用:映画ドラえもん のび太の月面探査記/配給会社:東宝
この言葉は、現代の社会においても重く響きます。
世界で開発されている武器は人間が作ったもので、それにより破壊されてしまった日常は、簡単には取り戻すことが出来ません。
そのディアボロの言葉に、ドラえもんが反論します。
違う、想像力は未来だ!ひとへの思いやりだ!
引用:映画ドラえもん のび太の月面探査記/配給会社:東宝
辻村深月さんの本作への思いともリンクする、このドラえもんの言葉。
破壊を生み出した想像力に対抗出来るのもまた、未来を思いひとを思う想像力だと訴えかけてきます。
映画のラストでは、離れ離れになるルカとのび太たちによる言葉が響きました。
バッジが無くたっていつでも会えるよ。僕たちには想像力があるんだから
いつか月と地球が当たり前に行き来出来る、その日まで
引用:映画ドラえもん のび太の月面探査記/配給会社:東宝
これらの言葉から、想像力が実現出来ることを、私たちは想像することが出来ます。
未来を想像し、誰かを思い浮かべること、何かを信じることが大事なことだと思わずにいられません。
想像力そのものの力、そして想像力の可能性というメッセージが込められたドラえもんらしさ溢れる作品です。