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2015年に原作が出版され、第69回日本推理作家協会賞を受賞したことで話題となった【孤狼の血】が『凶悪』の白石和彌監督により映画となりました。
映画自体も第42回日本アカデミー賞や第61回ブルーリボン賞など、その他にも多くの賞を受賞しています。
昭和の終わりの広島で起きる暴力的で残虐な大上の死が持つ真相や本当に残虐非道なのは誰なのかを徹底考察していきます。
暴力団のストッパーとしての役割
最初、日岡の眼に映っていた大上の姿とは
暴力団から賄賂を受け取り、暴力を奮う大上を早く警察という組織から追い出したいと考えていました。
日岡は正義感が強く、学歴もある真面目な新人だったのでヤクザのような大上に対し嫌悪感しかありませんでした。
上早稲の妹から事情聴取をすれば自分を取調室から追い出し、ズボンを履きながら出てきたりもしました。
スロットを打ちに行ったり、風俗店でプレイを受けながら聞き込みをしたりと常人離れした業務方法が目に付きます。
証拠を集めていく方法が犯罪だとも思え、言動を記録しては監察官の嵯峨に報告していました。
癒着しているのではなくエサをやっているだけ
日岡がヤクザと癒着していると思っていた大上は癒着しているのではなく、操っていたのです。
ヤクザだけでなくその周辺の関わりある人たちとも密接になり、街の秩序を守るために手懐けていました。
彼らと同じ目線で同様に横暴な態度を取っていたことも信用に繋がり、何十年も呉原市を守っていたのです。
当初は日岡自身も大上と暴力団のどちらがヤクザかわからないと思うほどでしたが、大上と共に過ごすうちに様々なことに気付かされます。
大上に救われた人が山ほどいて、捜査に協力的な人が多数いることは日岡の正義感ではできることではありません。
関係を作り上げたことで得た情報量こそが大上の強みだったのです。
大上のノートを血眼になってほしがる警察組織
監察官の嵯峨の指示により、日岡は大上の行動を見守り逐一報告していました。
警察としてあるまじき行為を行っている大上の存在を気にかけているかと思いきや、嵯峨が本当に欲しかったのは大上のノートでした。
そのノートには警察内部の人間のもみ消したり知られたくない内容が書かれていたのです。
その事情を知られているから上の人間は大上に強く出ることができずにいたので、自分の手元に持っておきたかったのでしょう。
事件をもみ消していたり、夜の店の女の子との隠し子がいたりと警察の人間が立場を利用して隠していたことを大上に知られていたのです。
その情報は大上は日々の業務をしていく中でかき集めたもので、随時情報が更新されていきます。
日岡の手にノートが渡された時、自分が大上と共に働いていた本当の理由も知られていたことに驚きます。
それほどまでに大上は洞察力があり、相手のことをよく見て情報を集めることのできる優れた刑事であるということが分かったのでした。
そんな努力の結晶がこのノートだったのでしょう。
何かあるとこのノートのネタを使って内部の人間を揺さぶり、第三者に見られたら免職になる可能性のあるノートを誰もが欲しがっていたのです。
大上の死が持つ大きな意味とは?
大上の死後の日岡の行動
加古村組の苗代と一悶着があったときの日岡は、警察である自分が手を出すことはできないと一方的に殴られます。
大上は暴行を加える以外にも拷問や放火・窃盗を日常的に行っていました。