実際の中原中也の「春日狂想」ではこの後、自殺しなきゃと思っても業が深くて死ねない……と続きます。

恋人を失っても、実際に死ぬことはなかったのです。

しかし、恋人を失った失意の鳴子にとっては冒頭の強烈な部分しか見えなかったのかもしれません。

原作で卓也は姉が自殺したことを知っている

君は月夜に光り輝く (メディアワークス文庫)

原作小説を読むと、卓也は唯一姉が自殺したことを知っている人物として描かれています。

彼は鳴子が自殺しようとして首吊りのロープを準備していたのも知っています。

卓也はなぜ姉が「死」を選んだのか「死」とはどんなものなのか、と「死」へ惹き付けられていたのです。

卓也はまみずの「死」へ惹き付けられていた

原作で卓也はもうすぐ「死」を迎える自分に憧れている、とまみずは語っています。

卓也がまみずに惹き付けられたのも、当初は恋ではなく「死」への興味だったのかもしれません。

また原作では、まみずに会うようになった卓也が、まみずの為に死にたいと思うようになる心情も見え隠れします。

映画ではさらっと流されてしまいましたが、この辺の事情を知っていると、まみずが卓也に託した最終代行の意味が深くなってくるのではないでしょうか。

「もう会わない」というセリフ

君は月夜に光り輝く +Fragments (メディアワークス文庫)

観る者をミスリードさせてしまうのが「もう会わない」というまみずのセリフです。

彼女はどんな思いで卓也を引き離したのでしょう。

ミスリードのきっかけ

まみずは突然、卓也に会いたくないと告げます。

原作では更に、卓也の顔を見たくない、人間として嫌い、来なくていいなど辛辣な言葉を投げかけています。

この、まみずのセリフがミスリードのきっかけとなるのです。

卓也を自分から遠ざけようとするまみずですが、そこには深い想いがありました。

まみずは卓也が死に憧れているのを知っていた

まみずは卓也が「死」に特別な思いを持っていることを感じ取っています。

自分が死んだら後追い自殺をするかもしれない、卓也は好きな人が死んでしまったら生きていけない、彼女はそう考えたことでしょう。

だったら、嫌われて離れてしまおうという彼女の愛が卓也を遠ざけようとします。

原作を読んでわかる「生」への決意

君は月夜に光り輝く (上) (MFC)

映画ではまみずと卓也の世界が中心に描かれています。

しかし、二人の他にも生きることを放棄していた人物がいたのです。

香山の存在

香山は原作では、担任の先生ともセフレの関係を結び手当たり次第に女遊びをする人物です。

映画よりもダメ男で、生きることに無関心な存在として描かれているのです。

しかしまみずと出会い、恋をして人生観が変貌します。

言い換えれば、香山もまみずに「生」を与えられた人物です。