そしてまみずと卓也と香山が、それぞれを支えあい「生」を求めるようになっていきます。
映画でも香山にフォーカスを当てて観ると、また違った感情が生まれるかもしれません。
卓也は飛び降りようとした
死んだらどうなるのか知りたいといったまみずに、自らが死ぬことでどうなるのか教えようとした卓也。
屋上から身を投げ、まみずに死ぬことは怖くないと伝えています。
生きるのが怖いから死ぬという卓也に、まみずは生きることをお願いしています。
その時、卓也は自ら生きようと決意したわけではなく、まみずのお願いだから生きようとしました。
当初卓也の命は、まみずとの約束の上にある危ういものだったのです。
支えあって命をつないだ
まみずは卓也の灯のような命を救った少女です。そして卓也は死にゆくまみずに生きたいと思わせました。
二人は消えそうな命の綱渡りをしながら、お互いを支えあい「生」と「死」へと、一歩一歩足を進めていたのです。
しかしそこには確かに二人の命が輝いて存在していました。
命の輝きがテーマ
本作品は余命のない恋人という、お涙頂戴ものの映画ではありません。
命の輝き
月川翔監督は、テーマを命の輝きと始まりの光という言葉で表現しています。
「死」を受け入れるような生き方ではなく、出会いを通し「生」を追い求めるような輝く生き方をしていく若者達を描いているのです。
死ぬことに憧れを抱いていた卓也が、まみずと出会うことで生きることに目覚め、彼女の想いを胸に生きることを始めます。
まみずは卓也の代行体験によって、残された命を力いっぱい輝かせていきます。
二人がどう生きたのかを感じ取ってみてはいかがでしょう。
スノードームはまみずの世界
劇中序盤で卓也がスノードームを割ってしまいますが、このスノードームは映画全体の伏線になっています。
まみずの母親は、まみずが少しでも長く生きられるためにまみずを刺激の少ない病院の部屋へ閉じ込めています。
そこはまるで隔離されたスノードームの中のよう、そしてそんな世界を壊したのが卓也という訳です。
それを象徴しているのが、卓也が岡崎にいった下記のセリフです。
こんなところに閉じ込められて、死ぬのを待つだけだなんて残酷じゃないですか
引用:君は月夜に光り輝く/配給会社:東宝映画
最後に卓也は、結婚式というまみずとの理想の世界を自ら作ったスノードームに閉じ込めておくのです。
そこには卓也の心の中で、永遠に生き続けるまみずの姿がシンクロしています。
「生」に向き合うことの意味
命の終わりを迎えるまみずを描きながら、同時に生きることへ踏み出していく卓也を描く名作です。
この映画は「死」を色濃く描きながら、観る者に「生」とは何かを問いかけます。