デラクルスは生者の国へ帰る「死者の日」に、サンライズコンサートを開いていますが、これはデラクルスを思う家族がいないことを意味しています。
デラクルスが死者の国に存在していられるのは、ファンの記憶だけなのでしょう。
デラクルスが夢に暴走してしまったのは、愛を忘れてしまったからかも知れません。
家族の愛の在り方
家族愛は紛れもなくリメンバー・ミーの大きなテーマです。
愛の在り様が屈折した形で描かれているにも関わらず、観るものは大きな愛に包まれているミゲルを感じることが出来ます。
劇中で伝えたかった「愛」は一体どのような家族愛だったのでしょう。
愛しているから抑圧してしまう?
ミゲルの家族が行っている音楽禁止の伝統は、度を越え支配欲に類似します。
「かつてイメルダとココが音楽の為に辛い思いをしたから」という音楽抑圧の理由を聞くと愛があるからだと思えますが、果たしてそれは本当の愛でしょうか?
自分達の過去に縛られ、未来あるミゲルを箱にしまってしまうのは愛だと勘違いした支配欲です。
ココは父親の愛を知っていた
ラストは一族がミゲルの音楽を認めるハッピーエンドに描かれています。
ヘクターの罪によって幸せな一族に歪みが生じていました。
しかしヘクターの想いが通じたラストでは、愛情のひずみが修復し本来の愛に満ちた家族に戻ります。
実は、劇中で「ココが高齢で無口である事」が大きな意味を持っています。
ココは歌を通してヘクター(父親)の愛に包まれていることをずっと感じていたのです。しかし家族はそれを知りません。
もし、ココが家族と沢山会話をしてヘクターの事を話していたら、ヘクターの写真もきっとオフレンダに飾られていたことでしょう。
ココが家族をつなぐキーパーソンとなっており、リメンバー・ミーの原題がCOCOなのも納得です。
「リメンバー・ミー」の歌詞がすべてを物語る
「リメンバー・ミー」は邦題に取り上げられたように、劇中で大きなメッセージを投げかける歌です。
そしてこの歌詞は物語の全てを物語っているのです。
リメンバー・ミーの歌詞
リメンバー・ミーの歌の中で「お別れだけど、忘れないで」と歌い上げるシーンは多くの人が心打たれる場面です。
忘れる時が愛が消えた時なのです。だからこそ歌中で「忘れはしない」と愛を伝えています。
ヘクターが作ったリメンバー・ミーでは「いつまでも見守り包み込む、また抱きしめるまで」とも歌われています。
ヘクターが生前、家族と再会することを望んでいたことが歌詞からも伺えます。
そしてこの歌詞は死んでからのことも同時に指し「死者の国で再会し抱きしめるまで」とも取れますね。