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1955年8月14日に公開された恋愛映画「旅情」。この作品では監督と主演女優がアカデミー賞にノミネートされました。
しかし観客からの評価はまちまちで、不倫を題材にしているとして非難する声も挙がっています。
旅先で恋人探しをする堅物女性と妻子のいる遊び慣れたイタリア男性。
2人が過ごしたひと夏はただのアバンチュールだったのか、それとも本当の愛が存在したのでしょうか。
もしかしたら私達が見落としている部分に「旅情」の本質があるのかもしれません。
時代背景がキーポイント
この映画が完成した1955年当時のアメリカは第二次世界大戦の戦勝国として好景気に沸いていました。
この頃が「古き良きアメリカ」と呼ばれている時代です。
ジェーンもバリバリ働いていた上にその恩恵も受けたのでしょうから、裕福な暮らしをしていたのだと推測されます。
浮浪児マロウ
好景気のおかげでお金持ちになったアメリカ人がヨーロッパに次々と旅行しに来るようになっていました。
マロウもジェーンのお金目当てで彼女の御用聞きをしていたのでしょう。
いくらでもお金を持っているのですから、彼女のようなアメリカ人旅行者は良いカモだったはずです。
レナートはジェーンに一目惚れ?
浮浪児マロウはお金目的でしたが、レナートは純粋にジェーンに惹かれていただけなのでしょうか。
小さなアンティークショップを経営しているレナートにとっても、ジェーンは良いカモだったのかもしれません。
ジェーンの泊まる宿にレナートがゴブレットを届けに行った時、ある出来事で彼女の信用をレナートは失いそうになりました。
アメリカ人老夫婦が全く同じゴブレットを観光地で6つも購入して帰ってきたのです。
レナートが経営しているのはアンティークショップですから、同じ物がそれほど多くあるはずがありません。
やはりレナートも浮浪児マロウと同様に、ジェーンの持っているお金目的で近づいてきた証拠です。
男性に対してガードが固いジェーンの心を引きつけたレナートは大した男です。
しかしこれではますますジェーンの心が閉ざされてしまいそうで心配になってしまいます。
8ミリカメラ
初めてのイタリアに興奮するジェーンは、見るもの全て8ミリカメラに収めようと夢中でした。
この映画を観ている私達も彼女が見ていた風景を楽しめるようにという工夫がされています。
傍観者から主役へ
8ミリカメラを回している彼女は、イタリアをレンズ越しにしか捉えることができていません。
それはイタリアを外から眺める「傍観者」の立場でした。
自分とは関係ない土地で、自分とは関係ない出来事が起こっているという感覚だったのでしょう。
しかしレナートと出会って恋に没頭するようになると、もうカメラは必要なくなりました。