直接犯罪に関与はしていないものの、世間体を気にして職業などで差別する一面も見られます。
一般女性といえばそうですが、社会の黒い部分を見せる濃いキャラクターです。
アイリーンとゼルビーの夢を邪魔したキャラクターとして印象的ですが、こういったポイントが映画ではモンスターとして描かれているのです。
ゼルビー
ゼルビーは、アイリーンに会うまでは何も知らない世間知らずな子として描かれていました。
本作では、依存という言葉もキーになっていますが、まさにゼルビーに当てはまる要素です。
家を出てアイリーンと暮らすようになってからは、自分で働こうともせずアイリーンを頼る生活を続けていました。
しかしここで注意しなければならないのは、彼女にとってはそれが常識だったという点です。
これだけではモンスターとは言い難いですが、ラストではゼルビーがアイリーンを裏切りました。
ゼルビーをモンスターといえるポイントとは、常に自分を守ろうと保身の体制になっていることでしょう。
他人を利用するだけ利用して、自分には何の非もないと本気で思っている自分勝手で常識知らずです。
実はアイリーンを死刑にすることに加担していたのではないかという説もあるくらい。
アイリーンにとってはゼルビーが全てでしたので、アイリーンはまんまと嵌められたのではないでしょうか。
このタイプは本能的にというよりも計算してモンスター化するタイプでしょう。
そういう意味では、アイリーンとは少し違っていると思われます。
彼女自身の内面の醜さ、そして愚かさによってモンスターになってしまったのです。
まとめ
実在するアイリーン・ウォーノスが起こした残忍な連続殺人事件。
アイリーンという人の根底にある「自分のためならしょうがない」という価値観が、彼女を殺人鬼にした大きな原因なのです。
そして映画【モンスター】に描かれていたのは、アイリーンのモンスター性だけではありませんでした。
私たち人間は誰でもモンスターになり得る要素を持っているのです。
人間の人格を形成するうえで重要な家庭環境や教育、人との関わり方により大きく左右されるということも考えさせられる作品だったといえます。
私たちは他者と関わりながら生きていく以上、物の分別や善悪、その境界線をはっきりと区別しておかなければなりません。
また、「自分だけよければいい」という自分本位な価値観は、持つべきではないのかもしれませんね。
本作では「どうすれば救われたのだろうか」と考えさせることに意図を感じます。
誰も手も差し伸べてくれない環境を作らないようにすることで、アイリーンのようなモンスターが生まれることを阻止できるかもしれません。
そして、モンスターが生まれることのない世界にしなければならない、という強いメッセージがあったのではないでしょうか。