ビリー・マックはクリスマスという一大イベント同様、このアンサンブル映画の大切な統合ファクターだったといえます。
マークは監督の自己投影なのか
映画の中の数々のロマンスの中で、最も印象的だったのはマークとジュリエットの恋ではないでしょうか。そのマークについて掘り下げます。
監督の妻が言い当てたマークの正体
画家のマークは男友達の新妻・ジュリエットに片思いを寄せています。それがばれてクリスマス・イヴにちょっとしたロマンスが生まれました。
マークを演じたアンドリュー・リンカーンは日本でも人気のある俳優です。
なので多くの女性がこのシーンをベストだと思ったのではないでしょうか。
そしてマークは、実はリチャード・カーティス監督自身ではないかといわれています。それを指摘したのは何と監督の妻だったそうです。
何でも撮影中、監督がひときわ熱心にリンカーンに指示を出している最中、彼女が「マークはあなたね」と言ったといいます。
真意は分かりませんが、もしかすれば監督にもマークのようなほろ苦い片思いの経験があったのかもしれません。
マークを演じたリンカーンの思い入れ
マークはジュリエットに大きなボードを次々とめくって愛の言葉を伝えるというユニークな告白をしました。
日本人が観ればお笑い芸人がよく見せるフリップ芸にも近いものがあり少なからず笑いも誘います。
ボードに書かれた愛のメッセージはカーティス監督自身が考えた言葉でした。
5つのパターンがあり映画の女性クルーにどれがベストなのか選ばせたそうです。
しかしその言葉をボードに書いたのはマークを演じたリンカーンだったといいます。
ただ字に自信があったからだといいますが、それは照れ隠しではないでしょうか。
リンカーンは、監督がマークに並々ならぬ思いを抱いていることを知っていたはずです。
そこで彼もまたマークという役に深く入り込もうとしたのかもしれません。
彼がボードに自筆の愛のメッセージを書いたのは、そんな気持ちの表れだったのではないでしょうか。
自分よりも人の幸せを願う作家の性
マークはジュリエットの結婚式でカメラ撮影を担当し、幸せ絶頂の姿をみごとに映像化しました。ジュリエットは後に彼の気持ちに気づきます。
しかしマークは彼女の幸せを願う立場を選択しました。そこには映画監督というラブストーリーの作り手の真情も垣間見えます。
自分が幸せになるよりも、他人の幸せを見ていた方がハッピーになれる。そういう作家の性がマークの哀愁あるストーリーから感じ取れます。
ただのクリスマス映画ではない魅力
『ラブ・アクチュアリー』には、ただのクリスマス映画に終わらない味わい深さがあります。
映画のテーマは憎しみの時代に愛を広げようという点にあります。ヒースロー空港での数多くの一般庶民の愛溢れるシーンは象徴的です。
当時は9.11テロから間もない国際テロの最盛期。ニュースでは日々、世界中に憎しみが溢れているような報道がなされていました。
しかし冒頭のナレーションでもあるよう、目の前の現実に目を向けると憎しみよりも愛が感じられます。
『ラブ・アクチュアリー』という題のActuallyとは「本当のところは」といった強い現実性・実在性を意味する言葉です。
本当のところ、この世は愛に溢れているんだ。それが映画の最たるテーマでしょう。