彼には自分が居心地のいい城があります。
劇中ではその安らぎの場所から、無理矢理外へ引っ張り出されたのです。
城にいるのは可哀そうだからと街へ連れていく、それはペグのエゴだったのではないでしょうか。
面白おかしく描かれていた近所の人々の姿は、監督が見てきた世間の姿なのでしょう。
世の中の偏見の目
劇中でエドワードは様々な人に話しかけられます。
彼がどのような好奇の目で見られているかが、絶妙に表現されているシーンです。
上記したようにペグにとっては、可哀そうな存在として映っています。
そして下記のように話しかけた老人もいました。
戦争で弾丸が当たって、このとおり義足をつけとる。人に身障者とは呼ばせるなよ。
引用:シザーハンズ/配給会社:20世紀フォックス
彼にとって人造人間は障害者だったのでしょう。
時に個性的な人間は、様々な偏見の目にさらされてしまうのです。
本当のエドワードはどんな存在なのかを知る為には、偏見の目を捨てなければなりません。
劇中の色彩が物語るもの
「シザーハンズ」の色彩は独特で、美しさも群を抜いています。
そしてカラフルな街並みとモノクロ世界が、不協和音を奏でているようです。
カラフルな色は俗世間を表している
劇中に登場する家々はどれもカラフルで、まるでテーマパークの街並みのようです。
この奇抜な色は、俗世間の意思であり欲望を表現しているのではないでしょうか。
人は皆、欲をもって生きています。
劇中に住む人々の欲は誇張されて描かれていますが、人間の本質を表に出しているのです。
エドワードのモノクロは無欲を表している
エドワードは、街の人々に比べ欲はありません。
今目の前で起きていることに対処して生きているだけです。
モノクロは欲のない色、それゆえに美しい色でもあります。
エドワードは生粋の「悪」であり生粋の「善」である
深読みをしてみると白は「善」を表す色であり、「黒」は悪を表す色です。
エドワードは、まさにニュートラルな存在といえるでしょう。
しかしそれは繊細な位置づけです。
関わる世界、関わる人々によって彼は善にも悪にも染まります。
これは人間の人生にもいえることで、環境によって子供は善にも悪にも染まっていくのです。
人に罪があるのではなく、社会に罪があるというメッセージも隠れているのではないでしょうか。
居心地の悪さ
エドワードは自分の世界からカラフルな街へ連れてこられますが、街は彼には不似合いでした。
それは色彩がはっきりと示しています。
黒が基調のエドワードは一人だけ異質な雰囲気を出すのです。
もしも自分がエドワードのような存在であの町へ入ったら、居心地の悪さは明白でしょう。
しかしエドワードは当初それに気が付かず、徐々に自分の居場所ではないことを感じていくのです。
監督は色彩で、エドワードの心境を上手く表現しています。
ちなみに映画で使用された家は実在のもので、撮影用に塗られた色もまだ残っているそうです。
ご興味のある人は、フロリダ州中部のタンパを一度訪れてみてはいかがでしょう。
雪は愛を表現している
物語のきっかけともなった「雪」ですが、この「雪」は何を表現しているのでしょう。