しかしそれは本当の自分ではないことに不安が募ります。
素顔の自分のままでもティナに相手にされるのだろうか。彼女を守ることができるのだろうか。
マスクが剥がされた時に冴えない不幸続きの人生に逆戻りしてしまうのではないかと悩みました。
原作では主人公は殺人に魅了されてしまいますから、こんな苦しみなどなかったでしょう。
結局彼はマスクを捨てることを選択し、現実を受け入れる決意を固めます。
そしてマスクがただのきっかけにすぎないことを理解したのです。
気が弱くて何をやっても上手くいかない自分を認めることができず、否定し続ける毎日。
周りの人達も自分のことを受け入れてくれていないと思い込んでいました。
しかし実は自分を受け入れられないのは自分自身だったのです。
自分と向き合うきっかけを謎のマスクが作ってくれました。
マスクに人生を操られる原作の主人公と、人生を切り開く映画版の主人公。
アナタの人生に必要なのはどちらのマスクでしょうか。
人間の本質は変わらない
原作ではマスクによってその人の残忍さが表面化しています。
一方映画では主人公の真面目さや優しさゆえに残忍なキャラではなく、弱い人を助けるヒーローとしての顔を見せてくれました。
つまり被る人次第で善にも悪にもなるのです。マスクを被って別人格になろうともそれは結局自分自身。
ならばマスクを被らずとも本来の自分をさらけ出せるのではないでしょうか。
マスクを被って自分の嫌なところを隠そうとしても本質は何も変わりません。
だから「素直な自分でいいんだよ」と監督は私達に伝えたかったはずです。
もしこの作品がマスクの力で殺人を犯すホラー映画のままだったら、こんな優しいメッセージを込めることができたでしょうか。
変身願望
この作品が多くの人に受け入れられています。
その理由の1つとして主人公のように変身してみたいという願望を誰もが心の奥で持っているからだと思います。
コンプレックスを持っていない人はいないはずです。他人と比べては自信をなくすなんてこともあるでしょう。
見栄を張ったり他愛もない嘘をついたり、素の自分を受け入れることの難しさを痛感していませんか?
マスクを手に入れるまでは主人公もそうでした。変身した彼は理想の自分に出会ったのです。
自分が認識していた頼りない自分を打ち砕くようなパワフルなキャラに一時は有頂天になりました。
変身願望を満たした後は幸せになりましたか?なりたい自分になれたのに不安に駆られるなんて不思議です。
表面だけの変身は長くは続きません。なぜなら自分を受け入れることができていないからです。