これは久美子と奏の心の距離感、そして久美子と秀一の関係はあくまでも他の部員に秘密である事が重要になってきます。
「それ以上は聞かないで!」という久美子の心情を、柵が久美子の心情を線引きするかのように表しているのではないでしょうか。
つまり柵は久美子の防御線、そこは入ってはいけない領域だよ、という事を意味しているのです。
ネットは奏という人間を表す一つの道具
物語が少し進み、野球などのネット越しに久美子と奏が話すシーンもネットが効果的に使われた様子がうかがえます。
ここは二人のビジュアルをまるで蜘蛛の巣に捕らわれているかのような演出がなされていました。
久美子が様々なトラブルから逃れる事ができない、心理的な縛りを意味しているといえます。
更に上からぐるぐるといったカメラワークで表現されているのは、奏という人物と久美子の関係性です。
久美子には湊が理解できず、必死にもがきながらも混乱している様子を表しています。
柵やネットは久美子と奏の心の距離感でもあると同時に、湊がいかに捉えどころのない人間かを表現する象徴の役割があるのです。
久美子と秀一の恋愛模様
この作品の大きな要でもある久美子と秀一の関係。
アニメシリーズから劇場版へとグレードアップした作品内で描かれる二人の繊細な心理描写などを考察していきます。
揺れるブランコは揺れ動く恋心!?
公園のシーンでは、ブランコが登場します。
ブランコのない公園の方が少ないかもしれませんがありふれたものにこそ意味を持たせてくるのが京アニのテクニックです。
これは前述した柵やネットと同じく久美子の心理を表す重要なファクターになっているといえます。
わずかなブランコの揺れは久美子と秀一がお互いの恋心の間で、どうしたらいいのかという心理的な揺らぎを表しているのです。
電車を待つ二人の距離感
電車を待つシーンでも二人の間は不自然なほどに遠いです。
付き合っている男女、という設定にも関わらずその距離は何故だか遠い。
これは二人の間の心の距離感を表しているのです。
そしてお祭りで二人の距離が近付いたかと思われる、キスシーンに発展しそうな場面では久美子がそれを拒否します。
電車のシーンから見えるもの
電車のシーンでは久美子の後ろの看板には宣伝文句がたくさん書かれています。
しかし秀一の後ろの看板には何も書かれていないという演出がされました。
これはずばり二人が置かれている状況が正反対である、という事を表しているのです。
久美子は指導担当としてだけでなく、様々な悩みを抱えています。
吹奏楽部のバランスを常に取っていたり、自分自身の将来の事など、心の中に抱えているものが非常に大きい事を意味するものです。
一方で秀一にはそういったものが何もなく、プレッシャーや縛り、責任などの重圧もない事を暗に表現しています。
二人の恋愛はすれ違い!?
本当に本作では久美子と秀一、二人の間に存在する「距離」をこれでもかと表現してきます。