2人が現実を受け止め、支えあいながら乗り越えた先に見えた答え。
それは夕焼けが映える屋上での祐介の告白とキスでした。
ストーリーから解明できる、山本監督からのメッセージとは
壊れかけながらも佐智と祐介は互いに惹かれあい、一緒の空間を過ごすことで心を癒していきます。
この映画から伝わる山本監督の思いは、「今」を生きてほしいということではないのでしょうか。
震災が起き、ある人はいわき市を離れ、ある人は呆然とし、ある人はやり場のない怒りに震えたはずです。
それでも福島は、着実に本来の姿に近づきつつあります。
前に進んでいる「今」を見つめて欲しい。
震災で崩れかけた心の状態であっても、支えあいながら少しずつでも現実を受け入れてほしいという想いが込められているのです。
「薄暮」の舞台 福島県いわき市とは?
福島県いわき市は、福島県浜通りの南部に位置あり、東北地方で2番目に人口の多い都市です。
当時、東北大震災による地震・津波被害だけでなく震災後に起きた原発の事故に伴う被害も大きく「原発に近い街」として風評被害も残っています。
山本監督の東日本大震災に対する思いとは
2019年11月に起きた台風19号でも被害を受けたいわき市。山本監督は現在も、被災したいわき市に足を運びボランティア活動に励んでいます。
東日本大震災発生当時を思い出しました。また機会を見つけてボランティアに参加したいです。
引用元:https://www.minpo.jp/news/moredetail/2019110769448
こう話す山本監督の姿から、「薄暮」公開後もいわき市を愛し、東北の復活を願う気持ちを感じることができますね。
「薄暮」の聖地巡礼
監督の想いは東北を舞台にしたアニメーションを制作して終わり、というわけではないのです。
この作品の背景には東北の再生を願い、多くの方に東北の今を知ってほしいという思いがあります。
そして、この映画を通して東北に恩返ししようという監督の意図も感じられるでしょう。
恩返しの方法のひとつとして、山本監督は「聖地巡礼」を挙げています。
「薄暮」を観た多くの方が聖地巡礼のために被災地に足を運び、福島の現状を知ること。
金銭面で復興を支えるのはもちろん、被災地を訪れることで「今」の大切さを感じ取って欲しいと願っているのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は山本監督のアニメーション映画「薄暮」について解説して参りました。
東日本大震災で被災したいわき市で懸命に生きる高校生の心の成長が描かれた作品です。
舞台をいわき市に置いたことで、物語の些細な描写や使われる音楽にも深みが増していたのがお分かりいただけたかと思います。
そしてなによりも「薄暮」を通して震災を風化させずいつまでも私たちの心に刻まれるように、という願いが込められていました。
山本監督をはじめクラウドファンディングを通して協力してくれた方々の希望がつまった作品といえるのです。