健康に生まれてきたのにどんどん手足などが肥大化するメリックの様子を見た両親はどのような気持ちだったでしょうか。
計り知れないほどの葛藤があったと思います。
プロテウス症候群患者は合併症も起こしやすく、若くして命を落とす患者が多いようです。
メリックの場合は合併症が死因ではないようですが、思いがけない原因が死に直結する病気といえるでしょう。
とても稀な病気ですが、今も世界中で120人がこの病気と闘っているとされています。
これだけ症例の少ない奇病ですが、何が原因なのでしょうか。
プロテウス症候群の原因とは
プロテウス症候群は遺伝しません。ですから親から子へ受け継がれる病気ではないことははっきりしています。
原因は遺伝子の突然変異であることが2011年に判明しました。AKT1という遺伝子に異常があるらしいのです。
最近は遺伝子で何でも判明する時代になりました。
犯罪捜査でもそうですし、肥満遺伝子検査キットをネットで買うことも可能です。
ここまで遺伝子検査が世の中に浸透しているなんてことを19世紀の人が知ったらきっと驚くでしょう。
原因遺伝子を特定できたことで、今後は治療薬が開発されることが期待されています。
症例数わずか200件程度のプロテウス症候群ですが、患者の命は常に危険にさらされています。
また周りからの好奇の目に耐える彼らの心の傷は深く根深いもの。
一刻も早く心身ともにこの病気から解放されることを願わざるを得ません。
横になるとエレファント・マンは死ぬ?
まだ27歳という若さで亡くなったメリックは、ベッドに仰向けに寝た姿勢で発見されました。
死因は頸椎の脱臼あるいは窒息による自然死と判断。
奇形であるがゆえに横になって眠ることが難しいメリックは普段は足を抱える体勢で寝ていました。
ですから仰向けという寝姿は不自然なのです。
そのため仰向けに寝ることを試みた結果の事故死または自殺との説も囁かれました。
普通への挑戦
メリックの部屋には1枚の絵が飾ってありました。
そこに描かれていたのはベットに横たわって気持ち良さそうに寝る子どもの姿。
メリックにとって普通の体勢で寝ることは憧れでした。そしてこの日、初めて「普通」への挑戦をしたのです。
大聖堂を完成させた達成感が、この憧れの実現を後押ししたのかもしれません。
明らかになった謎
2011年にある番組でメリックの骨格標本を詳しく検査しました。
すると死因は確かに頸椎の脱臼だったのですが、仰向けになろうと試みたわけではないことが確認されたのです。
あの日メリックはいつも通り、膝を抱え込む体勢をとろうとしました。しかし何故か頸椎が脱臼し命を落とします。
力の抜けた体は肥大した頭部の重みで仰向けの状態になったようです。