出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B006QJT028/?tag=cinema-notes-22
1960年代から70年代の初頭にかけてアメリカ映画界を席巻した「アメリカン・ニューシネマ」。
この内省的なコンテンツに飽き飽きした映画ファンの前に登場したのが「ロッキー」「スター・ウォーズ」「ジョーズ」ら。
徹底した娯楽性と親しみやすく分かりやすいエンタテインメント・フォーマットに回帰した作品群でした。
1985年にPartⅠが製作された、この「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
この作品もその流れを汲み、奇抜なアイデアと、極めて上手く計算された「伏線」が観る人の心を踊らせ、全世界の老若男女に広く受け入れられSF、アドヴェンチャー、青春映画の金字塔となりました。
ここでは、続編のPart Ⅱを取り上げ、タイムマシンの秘密と監督ロバート・ゼメキス、盟友の脚本化ボブ・ゲイルの作り出した、遊び心満載の名作の秘密に迫まるとともにシリーズ全体の醍醐味も俯瞰してみましょう。
タイムマシーン「デロリアン」のタイムトラベル装置とは
カッコいいスポーツカーが観客のハートをわしづかみ
これまでいくつも作られてきたタイムトラベル映画。人類の永遠の夢です。
映画によって様々な装置が表現されてきました。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で画期的だったのは、既存のカッコいい自動車をタイムマシーンに変化させたことでしょう。
タイムトラベルに使われる「デロリアン DMCー12」は、かつてアメリカに存在した自動車メーカーが製造した唯一のクルマ。
デザインはイタリアの著名なカーデザイナー、ジウジアーロの手によるものです。
マーティーの友人、エメット・ブラウン博士は1955年11月5日、トイレで転倒し頭を強打、その時に「次元転移装置」が閃きました。
タイムトラベルに必要なものは
- 速度=時速88マイル(時速約140km)以上のスピード
- 電力=1.21ジゴワットの電力(これは脚本化ボブ・ゲイルのミス)正しくはギガワット(GW)。この電力を得るために、PartⅠでは小型原子炉にリビアのテロリストを騙して手に入れたプルトニウムを使っています。
- 1955年から帰るときには落雷の電力を利用しました。
- またPartⅡで登場する未来のデロリアンは日常のゴミを利用した「ミスター・フュージョン」と名付けられたリアクターを搭載していました。
バナナの皮とか飲みかけのビール、それが入っていたアルミ缶さえ使っていました。
これらを原子レベルまで分解し、核反応でエネルギー(電源)を得るとしています。そして何より、空を飛ぶことが可能になっています。
- タイムサーキット=現在の年月日と時刻と、到着希望の年月日、時刻を表示する装置で、まずこれで希望する年代や月日時間を設定します。
- デロリアンのスピードを加速させ、1.21ジゴワットの電力を「次元転移装置」に流し込むと、タイムトラベルが成功するというしかけです。
現実には不可能。悩ましいタイムパラドックス
よく考えられてはいますが、これは映画の上での夢物語。残念ながら実現は不可能です。
そして、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで一番悩ましいのはタイムパラドックスです。
過去へ行って、出来事を変えて戻ってくると、出発した時とは違う現在が発生している、というような理屈です。
PartⅠでは、過去を変えたため、帰ってきた時にパパ・ジョージは大作家に、マーティーの車はトヨタの新型ピックアップに、そしてビフはマクフライ家の使用人になっていたのでした。
実際、タイムトラベルに当たっては過去を改変してはいけない、というルールに則って製作されている映画も多くあります。
でも本シリーズではその辺りは自由に捉えて製作されてます。
面白いのはタイムパラドックスが複雑になりすぎ、Part Ⅲではドク自身が黒板に、時間の流れAと、別の流れBがあって、と整理するシーンが出てくるほど。