そして彼もまた、大学の教師だったという過去を持っているのです。
彼の話はドラマ化などもされており、ウォルターにとって身近な人物だったのかもしれません。
ハイゼンベルクが癌で命をなくしていることもあり、自分との共通点を見出しての命名だったのでしょう。
人格を変える存在
人は環境に左右される生き物といわれています。
本作品では多くの登場人物が他人の人格を変える存在として登場しています。
ウォルターの悪魔的な存在
ウォルターは彼の周囲の人間を不幸へ導く悪魔的な存在です。
ジェシーやソウルを始めガスなど多くの人物が彼によって自身の人格を変えられています。
更に妻スカイラ―さえも、罪へ加担させることで人格を歪められてしまうのです。
しかしウォルターのような勢いの強い存在ばかりが他人の人格を変える存在ではありません。
エリオット・シュワルツ
エリオットはウォルターの人格に大きな影響を与えました。
彼に劣等感を抱かせた存在です。
勿論意図的にではなく彼に非はないのですが、友人であった彼と自分との差がウォルターの心を歪ませていったのは否めません。
子供達の存在がハイゼンベルクをウォルターに戻した
ハイゼンベルクとして落ちるところまで落ちたウォルターですが、最後に自分の子供達に父親としての視線を送ります。
ラストに近づくにつれ、彼の人格はもはやハイゼンベルクとウォルターの差がなくなっている状態でした。
しかし子供たちの存在が、かつてのウォルターとしての優しい人格を引き戻したのです。
良くも悪くも人格を変える存在は、身近に存在しているのでしょう。
敵は主人公ハイゼンベルク
本作の主人公であるウォルターは、観る者を共感から嫌悪へと導くほどの極悪人です。
教え子を利用し子供に毒を盛りながらも「家族の為」と狂気を正当化しています。
しかしウォルター(ハイゼンベルク)は進むべき道の選択ミスにより、誰しもがなりうる存在なのです。
『ブレイキング・バッド』中の最大の悪はガスではなく、主人公ウォルターといえるでしょう。
麻薬問題を中心に、ひとりの男の生き方を問う話題作は何度観ても答えが見つからない作品ではないでしょうか。