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ハリウッドのスーパーヒーロー映画として最も変わったものはと問われれば、多くの人がこの『キック・アス』をあげるのではないでしょうか。
映画の主役キック・アスはただのスーパーヒーロー・オタクの高校生です。頭脳・体力・財力・宿命・特殊能力、そのすべてを持っていません。
つまりヒーローネクストドア・隣の家に住むヒーローなのです。
そんな映画がなぜ他のヒーロー映画に負けないような魅力を持つに至ったのか解説します。
またキック・アスよりも人気になったヒット・ガールの魅力についてや映画のラストに復讐を誓ったクリスについても見てゆきましょう。
『キック・アス』というタイトルの真意
ハリウッドの他のヒーロー映画との違いは何より『キック・アス』というタイトルに出ています。その意味を探りましょう。
いわゆるヘタレの比ゆ
「Kick Ass」という言葉は老若男女アメリカ人の日常会話でよく使われる言葉です。しかし「尻を蹴る」という文字通りに使われてはいません。
キック・アスというのはアメリカでさまざまな使い方がされる一種の比ゆ表現だといえます。
基本「He’s a Kick ass」という風にカッコいい人という意味で使います。がその反面、尻を蹴られる的になるような弱虫を指すこともあるのです。
主人公の高校生・デイヴは不良にかつあげされても黙ってお金を差し出すような男でした。日本の俗語でいえば「ヘタレ」です。
デイヴが自らを「キック・アスだ」と名乗ったのは単にカッコつけたかったからでしょう。
が、その反面で弱虫の代表になりたいという思いもあったのかもしれません。
キック・アスとはこのように正反対の意味を持っているのです。
軽いノリと勇気の入り混じったキック・アス
「Kick Ass」は動詞で使われる場合「やっつけろ!」という意味になります。
しかしスーパーヒーローが悪を倒すような大げさな意味ではありません。軽くやっつけてくるような感じなのです。
例えば学業のライバルがいたら試験の日に親に向かって「I’m gonna kick his ass」(あいつをやっつけてやる)などといいます。
それは警察のサポート役として街の自警団レベルの仕事をするキック・アスにもぴったりの意味合いでしょう。
また「Kick Ass」には「勇気を出せ!」「気合を入れろ!」といった意味合いもあります。
アメフトの試合前に選手たちが集まって「We gonna Kick their Ass」(あいつらをやっつけようぜ)などと大声で叫ぶのもそのためです。
これもまた勇気をふりしぼって街のヒーローになったキック・アスの姿に重なります。
このように「キック・アス」という名前自身に、他のスーパーヒーローとは一味違う魅力がさまざまに反映されているといえるでしょう。
他のヒーローにないキック・アスの個性とは
キャラの個性という点で、キック・アスは他のスーパーヒーローよりも頭1つ抜けているといえます。その魅力に迫りましょう。
自分でヒーローになることを決心
主人公デイヴは楽観主義と純真さがあれば誰でもヒーローになれるという信条の元、キック・アスになります。
一方ほとんどのスーパーヒーローの出発点は受動的です。
スパイダーマンはその特殊能力を有効に使うため、バットマンは悲劇的な宿命に導かれてヒーローの道に進みました。
デイヴの方が自発的な点で真性ヒーローだといえるのではないでしょうか。自らヒーローごっこを始め、そのうち本物のヒーローになる。
この筋を見たとき、日本人にはアニメにもなった漫画『ウイングマン』を思い浮かべた人もいるでしょう。