原作者マーク・ミラーとジョン・ロミータ・Jrはもしかしたら影響を受けたのかもしれません。
ヒーローへの純真な憧れとそれを実践した行動力にこそ、キック・アスの個性の核心があるといえるでしょう。
目的は正義のヒーローを増やすこと
ヒーローは空想の中にしかいないのに悪党は現実に数多くいる。デイヴはこんな不満もあって自らヒーローになろうとしました。
キック・アスの戦闘シーンはネット上に上げられ世の中に広まってゆきます。そしてレッド・ミストなどのヒーロー・フォロワーが現れました。
続編『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』ではさらに大勢のヒーロー仲間が加わり、キック・アスはそれに満足します。
ほとんどのスーパーヒーローは自らが悪を倒すことをゴールにしています。
しかしキック・アスは自らが弱虫ゆえ最初から正義のヒーローを増やすことを目的にしていました。
そのためキック・アスの方がリアルに世の正義にコミットしているといえるでしょう。
他のヒーロー映画とは違うキック・アスの真髄
『キック・アス』は他のヒーロー映画と根本的にどこが違っているのでしょう。2つの点を見てゆきます。
痛みが伝わるリアルな戦闘シーン
『キック・アス』はR15指定・15歳以下のDVDレンタルおよび購入規制がかけられている極めて暴力的な映画です。
普通、スーパーヒーロー映画とはスタイリッシュな戦闘シーンを撮ります。ヒーローがいかにクールにかっこよく悪を倒すのかが見所なのです。
しかし『キック・アス』の戦いはリアルです。街の不良やギャングの汚いリアルなケンカをヒーロー映画の中に落とし込んだらどうなるのか。
この映画にはそういうテーマがあるはずです。タランティーノ映画の暴力にも匹敵するような痛みと残酷さがあるのです。
ヒーロー映画のファンはこの点で賛否両論分かれるのではないでしょうか。
最大の敵は人々の無関心
スーパーヒーロー映画にはジョーカーのようなスーパーヴィレイン・超悪役がつきものです。
『キック・アス』にもフランク・ダミーコがいますがギャングのボス以上のキャラではありません。どの街にもいる平凡なギャング・スターです。
キック・アスの最大の敵は目に見えるものではなかったのではないでしょうか。
映画の冒頭、デイヴはかつあげされている最中に見て見ぬふりをする人の姿を目撃します。
またある戦闘場面では周囲の見ているだけの野次馬を罵倒しました。
キック・アスの最大の敵は悪を見過ごす人の弱さ・その無関心さにあったといえるでしょう。彼らもまた悪の共犯者だといえます。
この映画の最大のテーマは、多くの人にそうと気づかせることにあったのではないでしょうか。
ヒット・ガールの魅力
ヒット・ガールは役柄としてキック・アスのサイドキック(相棒)です。しかしその存在感は主役を食うほどのものでした。
父子鷹ならぬ父娘鷹
父子鷹(おやこだか)とは一般的に父が自分と同じ厳しい道を歩ませるために幼い頃から息子を鍛え上げることを意味します。
野球やボクシングなどではよく聞かれることです。
しかしこの『キック・アス』では父と幼い娘の父娘鷹。その上、元警官の父親は娘にプロの殺人者・ヒットマンの修行を課しています。
父が防弾チョッキをつけた娘を銃撃する冒頭シーンはこの父娘鷹のハンパない本気度を表しているといえるでしょう。