自分の選択がどういう結末を生むか、を想像する経験値は彼女にはありませんでした。
この後ジュヌヴィエーブはカサールとの結婚へと突き進んでいくのです。
ギイにカサールの件の報告の手紙も出さずに。
カサールの愛情は本物?
税金の支払いが遅れがちな傘店を救い、一方でジュヌヴィエーブの愛も救ったカサールという男。
彼のジュヌヴィエーブに対する愛情は本物だったのでしょうか。
ジュヌヴィエーブは誰かから愛されていないと、そして誰かを愛していないと生きていけないタイプの女性なのでしょう。
そこに現れた恋愛経験値も高く、財政力もあり、ハンサムなカサールに惹かれるな、という方が無理かもしれません。
ジュヌヴィエーブの若さと性格からしてカサールとの愛情生活を選択したのは当然の成り行きにみえます。
そこに彼女の本物の愛情があったかどうかは大いに疑問ではありますが。
片や王冠のシーンで表現されたように、カサールのジュヌヴィエーブを愛する心に偽りはないとみていいでしょう。
カサールのジュヌヴィエーブに対する愛情は本物なのです。
ギイはマドレーヌを心から愛していたのか
荒れるギイ
ギイの戦地からの連絡が滞りがちになったのは、ケガで入院していたから。
そのギイが兵役を終えてシェルブールに帰ってきました。
育ての親だった伯母さんの面倒を見てくれている幼馴染のマドレーヌからジュヌヴィエーブの経緯は聞いていたようです。
傘屋は持ち主が変わっていました。戦地から帰ったギイはジュヌヴィエーブの件もあり、やがて伯母さんも亡くなり生活が荒れます。
マドレーヌとの結婚。それは愛だったのか?
そこにジュヌヴィエーブのカサールのようにギイの前にマドレーヌという存在がクローズアップされてきます。
マドレーヌは伯母の面倒を見ながらギイの事を男として見ていたのです。
ジュヌヴィエーブが去った今、マドレーヌを見る目が変わったギイとの間を遮るものがなくなりました。
荒れた生活で寂しかったギイはマドレーヌに一緒にいてくれるように頼みます。これは愛だったのでしょうか。
本人はマドレーヌを心から愛している、とは言いますが、一人でいることが寂しいだけだったのではないでしょうか。
二人が離れてからのそれぞれの愛のあり方はさまざまな見方が出来ます。
ギイの「とてもね」に込められた真実
幸せの確認
有名なラストシークエンス。クリスマス前。雪の降る夜のガソリンスタンド。1963年もやがて終わろうとしていました。
ギイは自分のガソリンスタンドを持つという夢を実現しています。
マドレーヌとの間に男の子も設け、商売も順調のようです。
マドレーヌが子供のおもちゃを買いに行った間に一台の高級車が給油に立ち寄ります。
そのクルマにはアルジェリアに赴く時にシェルブールの駅頭で別れて以来のジュヌヴィエーブの姿が。
ギイはガソリンスタンドの事務所にジュヌヴィエーブを招じ入れます。
ここは暖かいわ
ジュヌヴィエーブが一言漏らします。
引用:シェルブールの雨傘/配給会社:東和
この一言に今のジュヌヴィエーブの心境を汲み取ることが出来そうです。
自分が今いる場所は「寒い」のであって、ギイのいる空間は「暖かい」。
部屋の暖かさに触れて彼女は思わず本音を漏らしたのではないでしょうか。
ジュヌヴィエーブは別れ際にまた口にします。
あなたは今幸せ?
ギイは答えます。