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『96時間』は一見さえないオジサンが、娘を誘拐される非常事態になり、培った能力で悪党を容赦なく蹴散らしていく爽快感のある作品です。
主人公からは冷徹なプロの所作を感じさせつつも、随所で娘を思うが故の凶行や感情の揺れが見える非常に魅力的な作品となっています。
ここではタイムリミットが迫る中で感情が変動していく主人公・ブライアンの”冷静”と”異常”を考察していきましょう。
娘の危機でも冷静な反応
ブライアンはキムが誘拐されるその瞬間も無駄な慰めは使わず、捕まるまでの10秒ぐらいで犯人の特徴を電話に叫べと言います。
このシーンで分かるのは彼がいかに冷静であるかという事です。犯人との交渉の際もプロである事の自負が見て取れるのです。
冷静さといら立ち、プロの中で揺れる心
キムからの電話を録音していたブライアンは、移動しながら元工作員であり親友でもあるサムに録音データを渡し、解析を依頼します。
その足で大金持ちで現在のキムの養父であるスチュアートの元へ行き事情を説明し、怨恨の線はないか確認を行うのです。
サムは電話の訛りからアルバニア・マフィアのリーダーであるマルコの存在を突き止め、ブライアンに伝達。
さらに無事にキムを取り戻せるリミットは96時間である事を提示しており、この時間制限が設定された事により、初めて事件が動き始めます。
パリへの空路で見せる常軌を逸した行動とは
スチュアートにプライベートジェットを用意させ、一路パリへと飛びます。
サンフランシスコからパリまでは10時間半かかるのですが、この機内では何度も録音した犯人の言葉を異常なほど繰り返し聞くのです。
その執念深さや執拗さには、キムを必ず取り返すという冷静さを感じると同時に、焦りに揺れる感情を見て取れます。
タイムリミットで気が焦り手がかりを失うというミスも
パリでキムの携帯に入っていたSDカードを入手し、その中にある1枚の写真から関係者の顔を割り出し、空港で一度は捕らえました。
ですがハプニングにより、関係者を逃がしてしまいます。逃亡した男は事故により死亡、一度手掛かりを失う結果に。
関係者はまだ若く、組織の末端である事は容易に想像できていたはずです。
しかしそんな相手を取り逃がし、結果死なせるというプロらしくない行動をとる事になります。
96時間という縛り・実の娘が誘拐されている事への焦りこそが作品に緊張感を与え、ブライアンが常軌を逸した行動を起こした一番の理由です。
縛りがなければ関係者を泳がせて追跡や盗聴をし、アルバニア人とのつながりをスマートに見つける事ができたはずでした。