出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/4774718572/?tag=cinema-notes-22
映画『シラノ・ド・ベルジュラック』はエドモン・ロスタンの戯曲を原作に1950年に映画化された作品です。
マイケル・ゴードン監督の下ホセ・フェラーとマーラ・パワーズを主演に据えて制作されました。
演劇としての完成度はもちろん衣装や音楽・脚本など総合的な完成度が高く以下を受賞・ノミネートしています。
アカデミー賞主演男優賞受賞
ゴールデングローブ賞
作品賞ノミネート
主演男優賞 (ドラマ部門) 受賞
撮影賞 (白黒部門)受賞
新人賞ノミネート引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/シラノ・ド・ベルジュラック_(1950年の映画)
17世紀フランスを舞台に主人公シラノとクリスチャンの悲恋の物語は時代を超えた普遍性があります。
本稿ではシラノがロクサーヌとクリスチャンの仲を取り持った理由をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、コンプレックスがシラノの人生にもたらした影響についても併せて読み解きます。
「欠落」を抱えた男たちの物語
本作を語る上で大事なテーマは「欠落」を抱えた男たちの物語であるということです。
青年シラノは剣の腕と詩人の才を持ちながら、異様な形の自身の鼻に対してコンプレックスがあります。
一方で彼の恋敵たるクリスチャン伯爵は逆に見た目は完璧でも粗野な上女性慣れしてい性格でした。
つまり中身が完璧でも見た目に問題がある人と見た目が完璧でも中身に問題がある男性の恋物語です。
単なる美男美女の恋物語でも2人の男が女を巡って争う泥沼の関係でもありません。
そのわずかなズレが本作の愛しさ故の切なさという独自の作風となっています。
シラノがロクサーヌとクリスチャンの仲を取り持った理由
上記で説明したように、本作の主役3人の関係は単なる泥沼の関係ではありません。
むしろシラノが恋文という形でロクサーヌとクリスチャンの仲を取り持ったのです。
何故このような行動に至ったのかを考察していきましょう。
鼻へのコンプレックス
1番の理由は鼻へのコンプレックスであり、それ故に女性へ告白できなかったのです。
これはロクサーヌ相手だからではなく生まれた時からずっと抱えていたものでしょう。
文武両道で剣の腕も文才もある彼が顔の欠点故に女性にモテなかったのでした。
つまり第1印象で跳ねられてしまうのではないかという不安があったと推測されます。
そしてそれがずっとシラノの自己肯定感の低さの原因だったのではないでしょうか。
ロクサーヌがクリスチャンに惚れていた
2つ目に、ロクサーヌがクリスチャンに惹かれていることを告げられたからでした。
しかもロクサーヌはシラノが自分に惚れているという気持ちに気付かないままだったのです。
そのすれ違いが引き起こした悲劇が決定打となってロクサーヌを諦めたのではないでしょうか。
ここで大事なのは潜在意識と顕在意識の2段構えではっきりと失恋を突きつけられたことです。
ここまで酷い仕打ちを受ければ、いかに屈強なシラノといえど恋を諦めることになるでしょう。
クリスチャンとの和解
3つ目に、そんなシラノがクリスチャンと和解したことが挙げられます。
普通だったらクリスチャンへの嫉妬を募らせて泥沼の争奪戦に発展してもおかしくありません。