日本人は文明の発展と共に「目に見えるものだけ」を信じるようになったのです。
その結果、人間は「想像力」というものを失いました。「想像力の欠如」が「信仰心の欠如」に繋がってしまいました。
狸を擬人化した意味
今作では狸が4足歩行していたかと思えば人間のように2足歩行になったり、マンガのような簡単な絵になる場面がありました。
そこにはどういう意図があるのでしょうか?
人間の醜さを表している
狸の擬人化は人間により姿を近くする事で人間の醜さを描いているのです。
2足歩行になった途端人間の言葉で話し出す狸たちは段々と悪知恵の様なものも働かせます。
事故に見せかけて人間を殺すなど過激な事をする狸は、全て人間がしてきた事を体現しているのです。
2足歩行で人間の言葉を話し、人間の死も何とも思わない狸たち。
これは狸たちが人の姿を借りて悪い事をする事で人間への復讐心をより形あるものにしているのです。
そして絵がマンガチックになるのは決まって笑った時なので「人間ざまーみろ!」というような人間への揶揄の表現が込められています。
狸は現代社会の象徴
人間でも堂々と自分のありのままを見せられずに生きている人もいるという遠まわしな表現でもあります。
現代日本はSNS等が蔓延した社会で誰もが仮面を被って生きているような風潮があります。
人間でも陰に隠れ、陽のあたる場所で堂々と表向いて生きられない人もいるのです。
そんな現代の人間の姿をこの2足歩行の狸たちが象徴していると言えるでしょう。
過去の戦争というテーマが込められている
「平成狸合戦ぽんぽこ」には戦争や政治に対するメッセージが込められています。
第二次世界大戦中の出来事を狸が日本人で、人間がアメリカ人という形で表しているのです。
絶対に負けると言われていた日本とアメリカの戦争。
確かに権太率いる狸の軍団が人間の機動隊相手に向かっていく姿は、日本軍が戦時中に行った特攻隊のようにも見えます。
追い詰められた日本兵が勝ち目のない戦に打って出ざるを得なかった状況を暗に表現しているのです。
本作品と現代社会の接点
戦争が裏テーマにもなっている今作品ですが、現代社会に通じる要素もたくさんあるのではないかと考えられます。
信仰心を失ってしまう未来、そして人間社会の醜悪の塊ともいえる過去の戦争。
過去と未来、そして現代へのメッセージが込められている作品です。
狸たちが伝えてくれたいじめという悪
「平成狸合戦ぽんぽこ」は強者が弱者を虐げていくような物語です。