出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00LGC23D8/?tag=cinema-notes-22

【リリイ・シュシュのすべて】にはインターネット小説版と原作小説版、映画版があります。

14・5歳の少年・少女を主な登場人物として、いじめ、万引き、恐喝、援助交際、レイプなどの問題に鋭く切り込んだ野心作です。

扱い方にはかなり誇張された部分がありますが、この年頃には誰しも少なからず思い当たるような内容がちりばめられています。

ネット上の書き込みのやりとりが物語と同時進行で表現され、バックに流れる音楽と相まって独特の雰囲気を醸し出している作品です。

それぞれの心の闇

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物語に出てくる少年・少女はいずれも心の中に何らかの闇を抱えています。

自分でも持て余す心のモヤモヤは思春期の一時的な現象といえばそれまでですが、本人たちにとっては生死にも関わる重大事なのです。

ここでは星野、雄一、津田の三人について見てみましょう。

星野

映画パンフレットリリイ・シュシュオール
優等生の誉れ高かった星野が14歳の夏に豹変した理由は何だったのでしょうか。

彼はその一部を雄一に漏らしていますが、自分が考える自分の実力と周囲の評価のギャップに悩んでいました。

優等生を演じ続けることに飽き飽きしていたともいえます。いい方を変えれば自分で自分自身を恥じていたのです。

もちろん彼の友人たちによい顔をする母親に対する反発や一家離散してしまう家庭環境も彼の心に影を落としたことでしょう。

リリイ・シュシュの世界はそのような星野の唯一の逃げ場所だったのかも知れません。

彼の心の中は爆発する一歩手前の状態だったのです。

雄一

雄一は感受性の鋭い子で静かで目立たない存在ですが、常に人の心と自分に向き合って生きていました。

家庭環境はやや複雑で、決して嫌いではない母親は再婚し、実の父親とは違う男の子供を身ごもっています。

彼は特段具体的な不満を抱えているわけではありませんが、ザワザワとする心の中はどうしようもなかったのです。

やがて星野たちのいじめの対象になる彼に何らかの原因があるとすれば、どこか星野と同じ感性の匂いがすることだったのではないでしょうか。

星野から影響を受けた雄一はリリイ・シュシュの世界に沈んでいくのでした。

津田

岩井俊二 『リリイシュシュのすべて』ポスター市原隼人伊藤歩蒼井優鷲尾真知子稲森いずみ
津田も星野と同様雄一に何らかのシンパシーを感じていました。

彼女は雄一に泥沼のような生活から引き上げて欲しかったのです。

彼女は最終的には死を選んでしまいますが、それは今の自分に嫌気がさし、ただ自由に空を飛びたかっただけかも知れません。

空を飛びたいと思う彼女の心の闇はいかばかりだったでしょうか。

豹変した星野

okinawa

沖縄での出来事が星野の何かを劇的に変えました。

その豹変ぶりがあまりにも急激でしたので周囲の人たちは驚いたことでしょう。

でもその変化は彼の中ではある程度予定されていたことだったかも知れません。