過去と未来への警鐘と聞くと非常に仰々しいですが現代の“いじめ問題”にも大きく繋がる作品といえます。
陰湿で犯罪と呼んでもいいレベルのいじめが溢れかえっているい現代。
これは前半で書いた「想像力の欠如」にも通じるものがあります。
ここまでしたら相手は死んでしまう、など現代を生きる子供達は想像ができないのです。
「平成狸合戦ぽんぽこ」はそういう、強い者がよってたかって弱い者をいじめるという事も連想させる現代社会の闇を描いた作品でもあります。
殺人が日常化した現代という時代
現代は毎日ニュースで殺人事件などの詳細がテレビから流れてくる悲しい時代でもあります。
昔に比べ情報の取得が簡単となり、殺人が日常化してしまいました。
狸たちも目の前で死ぬ人間に対し、無関心であり“死”に対する感覚が鈍感である事がみてとれます。
同族であっても身内でなければ死んでいったその他大勢としか認識されません。
「平成狸合戦ぽんぽこ」はそんな時代の背景も浮き彫りにしたメッセージ性がひと際強いジブリ作品といえます。
宝船のシーンは何を表しているのか?
狸たちが宝船に乗って死後の世界へと旅立っていくシーンがありましたが、それに込められた意味とは何なのでしょうか?
“死”の悲しみを際立たせる演出
この船が“宝船”という表現をされているのは「死」というものへの恐怖や哀れみをより際立てる役割を果たしているのです。
どんちゃん騒ぎをしている事で楽しい描かれ方がされていますが、それが死ぬ事の悲しみを一層際立たせる役割を果たしているのです。
“明”と“暗”の対比
また天国に行ったらきっといいところだろうという、狸たちの願望も表されているのです。
この世は住処を追われ暗い、でもあの世はきっと明るい。
そんな現実世界と死後の世界の“明”と“暗”を対比している表現でもあるのです。
最後のぽん吉の台詞の意味
あの… テレビや何かで言うでしょう。
「開発が進んで、キツネやタヌキが姿を消したって、あれ やめてもらえません?そりゃ確かにキツネやタヌキは化けて姿を消せるのもいるけど…でもウサギやイタチはどうなんですか?自分で姿を消せます?」引用:平成狸合戦ぽんぽこ/配給会社:東宝
この台詞の裏にはやはり、自然を壊している人間への痛烈な批判と皮肉が込められているのです。
それを敢えて軽いタッチで台詞に込める事で動物達の危機感、そして人間の身勝手さをとても重く批判しているメッセージが込められています。
動物が人の住む場所に入ってきたのではなく、人間が動物の住む場所に入っていったのです。
私達の身近にも人間に化けた狸がいるかもしれません。
「平成狸合戦ぽんぽこ」は他人事ではない、あなたの隣にもいるかもしれない動物や人間の物語なのです。