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英国王ジョージ6世の吃音をテーマにした「英国王のスピーチ」。
歴史を基にした作品ですが、中には史実と違う部分もあるようです。
違う点があるならフィクションにすればいいのにと思ってしまいますが、実在の英国王を描いたのには監督のある想いがありました。
製作開始にかなりの時間を要した映画なのですが、その原因は主人公ジョージ6世の妻であるエリザベス女王が関係しています。
彼女が製作開始を遅らせた理由とは一体何だったのでしょうか。
史実との違い
映画「英国王のスピーチ」は史実を基にして作られましたが、いくつかの相違点があります。
年数の圧縮
映画では1934年にジョージ6世(アルバート王子)とローグが初めて会ったという設定になっています。
しかし彼らが出会ったのは1920年代。映画の中より10年以上も前の出来事でした。
しかもジョージ6世は1927年にはすでに演説を成功させています。なぜ10年以上の時間のズレを生じさせたのでしょうか。
ヒトラーは1933年に首相に指名され、1939年に第2次世界大戦が勃発しました。
監督はこの歴史に絡めたかったのかもしれません。
もし史実の通りに映画を作ってしまったら、ヒトラーの演説をテレビで観た時のジョージ6世の感心した様子は効果的ではないでしょう。
なぜならすでにジョージ6世は吃音を克服しているのですから。
ジョージ6世もすでに堂々とスピーチできていたと推測すると、食い入るようにヒトラーの演説を観るシーンは必要ないはずです。
それに戦争が始まろうとしている緊張感と、ジョージ6世のスピーチが成功するかどうかの張り詰めた雰囲気。
この2つを同じ時間軸に設定することで映画がドラマチックに展開すると考えたはずです。
吃音の誇張
ですが吃音で苦しんでいる人にとっては、程度に関わらず心に傷を負っています。
吃音が軽度だったから大したことはなかったなどとはいい切れないはずです。
敵対的すぎる
エドワード8世やジョージ5世が敵対的に描かれています。
エドワード8世に関しては、ジョージ6世の吃音を馬鹿にしているシーンがありました。
それにジョージ6世が王座を狙っているといいがかりをつけるシーンも。
またジョージ5世はジョージ6世に直接スピーチの手ほどきをする際、なかなか読めないことを叱責する場面があります。
ジョージ6世の吃音は周囲の人達からの圧力や王族という立場によるストレスが原因でした。
その事実を分かりやすくするために、周囲の人達がジョージ6世に敵対しているかのように描いたのでしょう。
心の問題は実際にはそれほど分かりやすい原因から引き起こされていない場合もあるはずです。
上映時間は限られていますから、その中で観客に効率的に訴えかけるための演出だったのです。
製作開始に時間を要した理由
この映画は発想から製作に至るまで30年の時を要しました。
これほど長い間製作されなかったのにはどのような理由があるのでしょうか。