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トム・クルーズは40年以上に渡るキャリアのほとんどを模範的な人物・ロールモデルを演じることに捧げてきました。
しかし2004年に出演した『コラテラル』はその数少ない例外です。彼はこの映画で人の命を虫けら同然に扱う非情な殺し屋を演じました。
髪をグレイヘアにするなど当時はその容貌の変化も騒がれたものです。
ここからはコラテラルというタイトルと物語との関連性やヴィンセントとマックスの関係性に迫ります。
またタクシーという密室空間が映画に及ぼした影響についても見てゆきましょう。
コラテラル・巻き込まれ型ストーリーの魅力とは
コラテラル・Collateralという単語には非常に多くの意味があります。
映画の中ではマックスが一度、自分がヴィンセントの殺戮劇に「巻き込まれた」という意味でコラテラルと口にしました。
コラテラルには巻き添えという意味もあります。この映画は基本的に巻き込まれ型のクライム・サスペンスなのでタイトルには最適でしょう。
犯罪ものには数多くの巻き込まれ型ストーリーがあります。何よりそれは観ている人の共感を引き出す効果があるといえるでしょう。
多くの人は犯罪とは無縁どころか、かすり傷1つもつかない平穏な日常生活を送っています。そこで刺激を求めて犯罪映画を観るのです。
しかし殺人鬼や警察やFBIなどが立ち回る異次元ともいえる世界なのでワクワクはしても他人事のように感じられるでしょう。
巻き込まれ型の犯罪映画はその点を乗り越えます。
一般庶民がたまたま不運に見舞われてめくるめく犯罪世界に巻き込まれてゆく筋は多くの人の共感を誘います。
いつか自分の身にも起こるかもしれない。そんな恐怖感がその人をより映画という異世界に引き込むのです。
物語に反映されたコラテラルの2つの意味
コラテラルには「巻き添え」以外にも多くの意味があります。その中の2つには、この物語とのつながりがあるといえるでしょう。
担保が意味する身代わりと人質
コラテラルには担保という意味もあります。担保とは借金やローンや銀行融資などの際に返せなかったときの保証として仮に差し出す資産のこと。
根本的に担保とはその人の身代わりとなるものです。借金を返せなかったときに自分の代わりに差し出すものなので人質とも取れるでしょう。
この映画のマックスもヴィンセントの担保・人質だったといえます。
マックスは一度ヴィンセントに命じられ彼のふりをして麻薬王との取引の場に行かされました。まさに身代わり担保です。
またヴィンセントには警察との争いになれば彼を本当の意味での人質にする狙いもあったのかもしれません。
親しい縁
コラテラルには付随という意味があり、それに伴って直接的な血縁のない親族を示すこともあります。
この点でも、映画の中のマックスとヴィンセントに重なるといえるでしょう。2人は親族どころか知人友人ですらないまったくの赤の他人です。
しかしタクシーの密室空間でのふれあいや殺戮劇をくぐり抜ける中で、不思議な絆を深めてゆきました。
コラテラルというタイトルには主人とその人質という冷たい関係性と共に深くつながった仲間という意味も読み取れるのです。