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「10代の妊娠」というと古今東西どこの国のドラマでも重たいテーマになりがちです。
性に関してリベラルで進んだ文化を持つアメリカでも、深刻に受け止められることがほとんどでしょう。
しかし2007年公開の『JUNO/ジュノ』は一味違います。「10代の妊娠」をポップで明るくユニークに描いたことで幅広い人気を得ました。
また元ストリッパーのディアブロ・コーディがこの脚本家デビュー作でいきなりアカデミー賞を受賞したこことでも知られています。
今回はハンバーガーの電話など数多くの小道具・ガジェットを切り口にして、本作の魅力を解説します。
そしてジュノが流した涙の理由は何だったのでしょうか。
ハンバーガー・フォンの魅力
『JUNO/ジュノ』はさまざまな小道具・ガジェットを活用した映画でもあります。まずはハンバーガーの電話から見てゆきましょう。
ポップ・テイストな作風を後押しした小道具
この映画の小道具として最も有名になったのがハンバーガーの形をしたハンバーガー・フォンでした。
公開後にeBayで販売されると大ヒットしたそうです。劇中では女子高生のジュノが使っていて、それが作風とマッチしていました。
ハンバーガーの電話は映画にポップ・テイストを加えました。10代の妊娠という重いテーマを描く上で大切な小道具になったといえます。
タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』でも随所に出てきたハンバーガーが作品全体にポップな味わいを与えていました。
映画の裏側エピソード
ハンバーガーの電話は脚本家のディアブロ・コーディも私用していたそうです。
彼女もジュノやマークのようにポップカルチャーの愛好家なのでしょう。
配給会社フォックス・サーチライト・ピクチャーズは、映画の評判をあげるために批評家などにこの電話を送ったということです。
この賄賂じみた行為もハンバーガーの電話によって笑えるエピソードとして受け取ることができます。
ハンバーガーはアメリカのポップカルチャーの象徴であり、世界中の人をハッピーな気分にさせてくれるものです。
普段何気に食べるハンバーガーには不思議な魔力があるといえるでしょう。
ジュノがくわえたパイプの象徴性
ジュノはよく煙草のパイプをくわえていました。日本の女子高生にはありえないこの奇妙極まる行為にはどんな意味があったのでしょうか。
老成JK・ジュノ
ジュノは恋人のポーリーに妊娠を告げる際、なぜかパイプをくわえています。
親友に妊娠を相談する際にはパイプをくわえながら巨大なグラサンまでかけていました。
それは完全にオヤジ趣味であり、アメリカの女子高生のセンスからもかけ離れているでしょう。
なので脚本家などの作り手はあえてこの演出をしたはずです。パイプをくわえたジュノは何よりも彼女の老成を感じさせます。
監督のジェイソン・ライトマンはジュノについて早く大人になりすぎた少女という認識を持っていました。
パイプはそのイメージを観る側に強く与えたといえるでしょう。何気ない小道具にも作り手側の深い意図があるのです。
煙草がないパイプが示すジュノの弱さ
パイプについて気になることはくわえているのが女子高生だという点だけではありません。そのパイプには煙草が入っていなかったのです。
つまりジュノはパイプ煙草を吸っていたわけではありませんでした。子供のようにくわえていただけなのです。