事故で亡くなったあとには、ひな子は社会とほぼ断絶したような状態になってしまいます。
これもつまり「うまく波にのれていない」のです。
ふたりの親密度
港はひな子と出会ってから本格的にサーフィンをはじめるわけですが、当然ながら最初はうまくいきません。
波にのっては落ちて、また波にのって…を繰り返します。
そしてうまく「波にのれる」状態になったときには、ふたりの親密度はすでにぐっと高まっていました。
「波にのれる」=「ふたりの親密度」とみることもできます。
3つの謎
ここでは本作に隠されている謎を本格的に解明していきたいと思います。今回は3つの謎に絞って考察を深めていきましょう!
メッセージを送った港の心境
ようやく港の携帯ロックを解除したひな子。携帯には亡くなる直前に入力して未送信になっていたひな子への想いが綴られていました。
「きみは僕のヒーローだ」と…。
なぜ「ヒーロー」なのか、それは直前のエピソードで全てが明らかになっています。
幼少期に溺れた港の命を救ったのがひな子だったのです。
これは全く劇中には描かれていませんが、港はおそらく自分が海で死ぬことを知っていたのではないでしょうか。
全く根拠はないのですが、彼の第六感とでもいうでしょうか。
命を救われた海でそして命を救ってくれた人に教わったサーフィンで、自分の命は終了するのだという覚悟のようなものがあったのかもしれません。
だからこそ溺れている人がいたときにまったく躊躇なく体が救助に向かったのではないでしょうか。
もう会えないと知りつつなぜ笑顔だった?
港は、無事「波にのって」ひな子たちが安全な場所に到着したことを見届けて、本当に安らかな笑顔で天に登っていくのでした。
さて、問題はなぜこのとき「笑顔」だったのか、ということです。冷静に考えれば、もう愛するひな子とはまったく会えなくなってしまうのです。
悲しいはずなのに、なぜ笑顔で去っていったのか。
それは、港がひな子の幸せを本当に想っていたからです。ひな子の幸せ=ひな子がひとりでも生きていけること。
そのために港は生きている間も、死んでからもサポートし続けてきたのです。
それは二人きりのクリスマスの夜にオムライスを食べながらつぶやくシーンからも分かります。
「オレがひな子の港になるよ。ひとりで波にのれるまで。」
引用:きみと、波にのれたら/配給会社:東宝
自分の力で力強く「波にのる」ということをやってのけたひな子。
そんな彼女を見て「ああ、もう俺がいなくてもひな子は大丈夫だ」と安堵したからこそ、笑顔で天に旅立っていったのです。
卵料理の意味
劇中に何度も登場するのが「卵料理」というファクターです。
何度も登場するのだから必ず意味があると考えていいと思います。どれくらい登場するのでしょうか。
- ひとり暮らしの部屋で食べた失敗したオムライス
- 港がつくってくれた卵サンド
- クリスマスにふたりきりで食べたオムライス
- 港がいなくなった後に友だちが買ってくれた卵サンド
- ラストに食べるオムライス
なんと5回も登場しています!さて、それぞれどういう意味なのでしょうか。
ひとまず、卵料理を食べるときの状況を整理してみます。①~⑤の中で「ひな子ひとりだけ」で食べているのは①のみです。
他は全て「誰かと一緒に」食べています。
そして「ひな子ひとりだけ」で食べた①のオムライスは失敗した上に、荷物の下敷きになり台無しになってしまいます。