まったく良いことがなかったのです。
「ひな子ひとりだけ」で食べたときだけ良いことがなく、②~⑤の他人と食べている卵料理は基本的にはおいしく食べられています。
つまり「誰かと一緒に食べている」ときは「うまくいっている」といえますね。
そして、「卵料理」だという事がさらにキーポイントです。
「卵」には何があるか…「黄身」がありますね。
「黄身」=「きみ」。つまり「きみ(黄身)と一緒」のときは「うまくいっている」のです。
この親父ギャグみたいな分析を強固にしている要素があります。それはタイトルです。
「きみと、波にのれたら」ですね。
「きみ」=youなら「君」と表記すればいいはずです。敢えてひらがなで「きみ」としているのには上記のような理由があるのではないでしょうか。
二項対立のその先へ
この映画にはたくさんの対立する事柄、つまり二項対立が存在します。
しかし、それらが完全に対立したままというよりは、新たな局面=第三項を創り出していこうという志向性がみられるのです。
まずは、二項対立の要素を挙げてみましょう。
名前
まず、主人公の名前です。
「港」という「水」を連想させる名前と「ひな子」という「ひ=火」が入っている名前との対立。
つまり「水」と「火」の対比です。
職業
港の職業は「消防士」いわば「水は友だち、火は敵」という職業です。
ひな子は最終的には「ライフセイバー」になります。
これはつまり「水から人を守る=水が敵」という職業です。
ここにも二項対立がありましたね。
命を救った側と救われた側
幼少期に溺れた港をひな子が救ったという出来事がありました。つまり、救われた側と救った側で真反対の立場ですね。
上記のような事項は決して対立したままではなく、ゆるやかに溶けていく様子が見てとれます。
名前でいえば、おたがいのフルネームを見ればわかります。
雛罌粟 港 (ひなげし みなと)と向水 ひな子 (むかいみず ひなこ)。
港の姓には「ひ」が入っていて、ひな子の姓には「水」が入っています。お互いが混ざり合っているのがよくわかりますね。
このようにただ対立し続ける二項対立ではなく、ゆるやかに混ざり合い第三項を創りあげているのが本作の特徴です。
まとめ
純粋なラブストーリーとしても楽しめるうえに、謎解きしつつ鑑賞できる深遠な映画でもある本作。
本記事をご覧になった上でもう一度観てみるとまた違った映画に観えてくるかもしれません。それこそが映画の醍醐味です。
ぜひ試してみてください!