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【ヘルタースケルター(ネタバレ)】3つの結末に監督が込めた意図を徹底解説!りりこはなぜ目をえぐった?片目で見えた景色とは

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B009E1F466/cinema-notes-22

R15+指定のこの作品は、主演の沢尻エリカの5年ぶりの映画出演となります。

『さくらん』も監督した写真家でもある蜷川実花が担当したことで話題となりました。

蜷川実花の独特で鮮やかな世界観と、芸能界の汚い裏側、そして女性の持つ執念のような感情が観る人を魅了する映画となっています。

りりこの存在は社長の夢だった?

社長が夢見た世界の再現者としてのりりこ

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若い頃、自らも芸能の世界に片足を入れていた事務所の女社長は、昔の自分と重ねた風貌へとりりこを変身させています。

社長自身が憧れていた世間からもてはやされるポジションへとりりこを育て上げています。

りりこ自身全身を整形し、美しくなった自分に誇りを持っており、美しくなったからこそ強くなったのだと語っています。

自分の美しさが作り物の為、なお一層自分の見た目が気に入っていていつも鏡で自分に見惚れています。

見た目だけで周囲の見る目が異なることも実感しながら好き勝手ワガママを言って過ごしています。

近い将来、自分は忘れられてしまうという不安に駆られる

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絶好調の最中でも、りりこは常にイライラしていました。

それは、自分の人気には期限がついており、いずれ自分は世間に忘れられる=死んでしまうのだという不安でいっぱいだったからです。

整形手術の後遺症のあざが顔や身体に出始めてからは、なお一層その不安が肥大していき、自身を破滅へと追い込んでしまいました

また、自分のことをもっと世間に知ってほしいという想いや、利益のことばかり考える事務所の社長を懲らしめることも行います。

自分自身のスキャンダルをマネージャーの羽田を利用しリークしたりと、社長の思い通りにならないという意思表示も見られました。

蜷川実花監督が創り上げる独特の世界観がすごい!

蜷川監督のこの【へルタースケルター】に込めた想いとは

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蜷川監督は元々原作のファンで、「この漫画を映画化したい!」とおもっていたそうです。

しかし【へルタースケルター】の映画化権が他の会社によって抑えられていた為、先に前作の『さくらん』を撮ることとなったのです。

『さくらん』の制作が終えてからも、交渉を続け、映画化権が空いた際にはすぐに権利を取得したのだそうです。

原作のセリフが好きで、セリフの素晴らしさと、女性の持つ強さと儚さのような部分はしっかりと描くことを意識したとのことでした。

また、りりこ役には「沢尻エリカしかいない!」と思っていたそうです。

沢尻エリカと言えば、「別に」と記者会見で発言してからは約5年もの間、芸能活動が休止状態にありました。

そんな彼女だから、りりこ役を演じるにあたってリアリティもあり、彼女にしか見えない景色や作品に対する共感があったのでしょう。

散々持ち上げられた後、一度どん底に落ちた彼女だからこそ、振り切ってりりこになりきれたのかもしれません。

蝶や唇が数多く誇張されていた理由

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さなぎが成長して美しく変身したり、孵化することで蝶になります。

しかし、蝶は儚い生き物なので、とても美しく成長してもすぐに美しい命が過ぎ去ってしまいます。

美しいものは命が短く儚いということを表す象徴として、多くの蝶が作中で起用されていたようです。

また、蝶と同様に多く見られたのが唇です。

りりこの部屋のインテリアの中にも多くありましたし、後半でりりこが見た幻覚の中には蝶とともに多くの唇も見られました。

女の子が初めて化粧をするとき口紅から始めることが多く、口紅を塗った瞬間から女性は美しくなければならないと自覚します。

口紅を塗ることで、ひとりの女性としてさまざまなものを背負っていくことがスタートする為、その象徴として描かれたのだそうです。

整形・ゴシップ・ドラッグ・犯罪に手を染めたりりこの行く先は?

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「もっと美しくなりたい」と思うことがまず美しいと蜷川監督は語っており、誰よりも美しくなりたいと願うりりこは美しいものでした。

しかし、自分の欲しいものが手に入ると更に欲望が生まれてしまうのも人間です。

りりこの場合、美貌を手に入れたいと全身整形をしました。

そこから先は自分が同じ場所にいるためにどうしていったらいいのかという不安から成る様々な悪事だったのでしょう。

綺麗になったからこそ、御曹司の彼と恋ができ、美貌を保つ為の薬を摂取し続けていました。

しかし、他の邪魔な存在はマネージャーの羽田やその彼氏を通して手にかけていたのです。

そういったことをしてしまうことでりりこの心は安定するどころか、どんどんと荒んでいきます

トップであり続けなければいけないという想いと、全て辞めてしまいたいという想いが入り混じってりりこはおかしくなっていきます。

自分に待っているのは芸能界における『死』であり、人々から忘れ去られてしまうという悲しい結末しかなかったのです。

「タイガー・リリー」に会いに行こう

そもそもタイガー・リリーとは?

本来、タイガー・リリーとは、ピーターパンに出てくる部族の娘のことです。

気が強く勇敢で、海賊にも向かっていき対等に渡り合える少女です。

言い伝えを信じ、フック船長の命を狙うなど、若い娘とは思えないほどの意志の強さと心の強さを持っています。

芸能界におけるトップの位置に居続ける為に美や賞賛に固執するりりこの姿を検事・麻田は、タイガー・リリーと呼んでいました。

ここでのタイガー・リリーとは、果敢な女性の冒険者を指し示していたのでしょう。

本来の自分の姿から、様々なことを犠牲にしても手に入れる『美』へと冒険するりりこをタイガー・リリーと呼びました。

そして、『美』の為に化粧で着飾ったり、プチ整形をする町の若い女性のこともミニタイガー・リリーと呼んでいます。

ついに検事・麻田が動き出してから大きく動くりりこの世界

美容整形を行う病院で、被害者が何人も自殺したりする事件が続いたことで検事・麻田が送検の準備を行っていきます。

その調査をしていく中で、世間を盛り上げているトップモデルのりりこが、その病院を利用しており、全身整形だと発覚します。

どんどん証拠が集まっていった麻田は直接りりこに会いに行き、裁判での証言を求めます

りりこの方は、整形をしているという事実を認めるわけにはいかないので、最初は麻田を誘惑しようとします。

しかし、整形以外のりりこの悪事も知られていると分かったりりこはそのまま呆然とその場に取り残されてしまいます。

様々なりりこの整形に関する証拠写真も麻田は所持しており、それを渡されたりりこは自分の終わりを感じます

りりこはなぜ目をえぐったのか?

蜷川実花 虚構と現実の間に

麻田がりりこに渡した整形に関する写真を、マネージャーの羽田が週刊誌へとリークします。

この時点で、羽田自身もりりこの悪事を手伝っておかしくなってしまっていました。

自分がいないと何もできないりりこを裏側から支配し、また自分を頼るように仕向けたかったのかもしれません。

整形していない部分である目も捨てて、世間からも忘れられない、人々の記憶に残る最後を見せつけました。

その時のいろんなことに惑わされない彼女の視線は非常に美しく、少なくとも最初よりは幸せになれたのではないでしょうか。

社長の言いつけを破り、自らの意思で行動したりりこは自分で自分のことを認め、自分が幸せだと感じることができたでしょう。

この瞬間に、りりこは肩の荷が下りて、胸を張ることができたのかもしれません。

3つの結末に蜷川監督が込めた意図とは一体?

①りりこの記者会見

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これまで、社長の言いつけを守り、枕営業までも行っていたりりこでしたが、全身整形の事実が世間へと流出してからは変わります。

りりこではもう稼げないと判断した社長が自分を切り捨てるのだと分かり、自分の人生を初めて自分で決めて行動を起こしました。

社長に言われた文章を読むのではなく、自分が見ていた美しい景色を汚す前に自分の目を塞いでしまったのです。

作り上げられた美貌は、やはり儚いものだったのです。

りりこは自分に責任を負って、自分の足で手でこの結末へと自らを導いていったのです。

自分の人生を自分で決め、責任を負い、自分の足で素敵に歩いていきましょうという蜷川監督の想いが込められています。

このシーンはその蜷川監督の意図を汲んだ場面だと言えます。

②見世物小屋でのこずえとの再会

蜷川実花 虚構と現実の間に
海外での撮影後の打ち上げで、こずえは見世物小屋へとスタッフと共に訪れました。

思わぬ場所で羽田を見かけ、スタッフ専用のドアの先に眼帯をしたりりこを見つけます。

このお店は、整形の後遺症で痣が多く出てきた上に、公共の場で自らの手で自らの目を刺してしまったりりこが経営しているのでしょう。

りりこの幻覚の中に出てきたような、様々な奇形の人間たちだけが働いているのです。

りりこ自身もまたこの人間たちと同種なのだということを示唆しています。

消息不明だったりりこは裏の世界で強かに生きており、芸能界にいたときのように不安で潰れてしまいそうな空気はありません。

芸能界に必死でしがみついてイライラしていた姿はなく、裏の世界での女王様のようにドンと胸を張っていました。

女性とは様々なことを乗り越えることができ、自分で決めたことを突き進んだ姿も美しいという監督の意図が含まれているのでしょう。

③スクランブル交差点で検事・麻田が思い返すりりこの姿

1つ目のラストでもあるりりこの記者会見でこの映画が終わりを迎えていた場合は単純なラストで済んだのかもしれません。

作られた美貌や世間のイメージは結局儚いものだったという印象で、映画を見終えていたことでしょう。

2つ目のりりことこずえが見世物小屋で再会した場面で終わっていたなら、転落しても女性は強く美しいのだという感想を持てます。

この3つ目のラストであるスクランブル交差点でのシーンによって、多くの女性や日本国民について考えることができます。

美容整形を行うことで、人は権力を作り出したり維持ができるということが全編を通して見えてきます。

これはりりこだけでなく、現代社会における芸能人や政治家などにも言えることでしょう。

そして、このことは一般人には知られてはいけない、権力者だけが持つことのできる裏の権利でもあるのです。

こうやってイメージを操作していたりりこですが、日本から姿を消してしまえば、批判も終焉を迎えます。

伝説の写真集が復刊されたとなれば、やはり人々はこぞって購入してしまうのです。

結局のところは整形は問題ではなく、ファンにとってはりりこの美しい姿は忘れることのできない宝物のような存在だったのです。

美や権力・イメージのことも踏まえて、このラストはより深い所での現代社会の問題を提起していたのかもしれません。