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いわずと知れた独特の世界観を持つ奇才、ティム・バートン監督によるホラーファンタジー映画『ティム・バートンのコープスブライド』。
ナイトメアー・ビフォア・クリスマスと同じく、ストップモーションアニメーションで作成されている本作品。
コマ撮りによるぎこちない動きや人形が持つ一種の生々しさがCGなどに比べると不気味でどこか懐かしくもあり、ティム・バートンの世界観とマッチしている作品です。
「死体の花嫁」と題された通り、幸せになるはずの花嫁衣裳をまとい殺された過去を持つヒロインは明るく強く振る舞ってはいますが、悲劇の中にいます。
そんな彼女の望みは何だったのでしょう。
そして作中には3度、蝶が出てくる印象的なシーンがありますが、これは何を意味していたのでしょうか。
本記事ではヒロインエミリーが結婚を思いとどまってでも欲しかったもの、そして蝶が意味するものは何かを考察していきます。
色彩が表現する二つの世界
物語には二つの世界があり、それぞれを色彩によって対比させています。
しかし、不思議なことに生者の国はモノクロに、死者の国は色鮮やかに表現されているのです。
陰鬱なモノクロの生者の国
この作品に出てくる生者の国には、まるで世の中の負の部分を集めたような人々しかいません。
身勝手で娘よりも自分たちの保身を第一とするビクトリアの両親がその最たるもの。
そして上流階級に憧れる成金の魚屋、金のために躊躇なく殺人を犯すバーキス、ミーハーで低俗さの象徴のような街の触れ役、頑固で意地の悪い牧師など。
ビクトリアの心配をするも何もできなく悲しむメイドや、常に不吉な咳をし死の影を感じさせるメイヒューなど善良な人もいますがどこか生き辛さを感じさせます。
そんな人々の心を映し出すように、一貫してモノクロで描かれる世界は、見ていると重苦しく陰鬱な印象しかありません。
その中で蝶だけが鮮やかな青色をしている事で、とても印象強く、蝶は何かを象徴する重要な役割を持っているように感じさせます。
カラフルな活気ある死者の国
生者の国に反するように、色彩豊かに描かれた死者の国。
骸骨や首だけの男、真っ二つに割れた男など恐ろしい姿ですが、みな陽気で楽しそうに過ごしています。
死は忌み嫌うものではなく、生きている時のあらゆる苦しみは死によって解かれ安らぎを得られる神からの贈り物という、キリスト教の考えも影響しているでしょう。
それと共に死んでもなお癒されない苦しみの中にいるエミリーの悲劇がより強調される効果にもなっています。
エミリーは、死者の国でもみんなにとって特別な存在なのです。
ビクターの二人の女性への愛の違いとは
運命の出会いと遅すぎた出会い
ビクターにとって最初は乗り気でなかった結婚ですが、ビクトリアと出会った途端にお互い心を通い合わせます。
彼にとってビクトリアは運命の人だったのでしょう。
しかしその直後に、エミリーと出会い誤解から結婚を迫られるのです。
ビクトリアの元へ戻るため結婚はできないと伝えますが、もし違う状況だったら…という気持ちからもエミリーへの想いが伺えますね。
後に、ビクトリアが他の男と結婚したと知ったビクターは、エミリーとの結婚のため全てを捨てて死ぬことを決断するほどの愛をエミリーに捧げます。