母親はアランの疑問や欲望は忘れ、ヘレンに誤解を与えず普段通りの生活に戻れと言っているようにも受け取れます。
そして出てきた街を見下ろすほどの大きな蜘蛛。
このシーンでアランの抑圧に対するストレスや欲望が大きなものに育ったと決定づける出来事だと表現しているのではないでしょうか。
衝撃のラストシーン
最後のシーンではアランがアンソニー宛の封筒を開けてしまいます。中には秘密クラブの新しい鍵が。
その鍵を見たアランは再度秘密クラブへ出かけるためヘレンに嘘をついてしまいます。
そしてアランが覗いた部屋の中には、ヘレンが変化した巨大な蜘蛛の姿。
この蜘蛛はアランから見た「また浮気をしに行くんでしょう」というヘレンからの疑いという抑圧の蜘蛛という解釈で納得することができます。
一度は理解し合えたにも関わらず浮気を何度も繰り返す限り、支配や制限も何度も繰り返す。
ラストシーンのアランのため息は「また疑われているのか」と感じてしまったからだと考えられます。
自動車事故の真意は
物語終盤アンソニーとメアリーは高速道路で事故を起こしてしまいます。
それはメアリーがアンソニーの指輪の痕に気づいたのが原因でした。
アランは心のどこかで、浮気をやめヘレンとお腹の子どもを大切にしてゆくと決意していた。
浮気相手であるメアリーともう一人の自分、アンソニーとの別れを決意していたのではないでしょうか。
アンソニーとメアリーを「交通事故で失う」という表現をしたのだと読み取れます。
そのため、この交通事故はアランの決別のための妄想だったのではないでしょうか。
フロントガラスのヒビが示す意味
アンソニーとメアリーが高速道路で事故を起こし、二人の乗っていた車は横転してしまいます。
横転した車のフロントガラスに蜘蛛巣状のヒビが残されているシーン。
そのヒビには浮気との決別をしたアランの、変化への不安や浮気への未練のようなものが込められていたのです。
また、その浮気癖の「繰り返す」ということを示唆していたかのようにも読み取れます。
ヒビを示すシーンの直後、アランは秘密クラブの鍵を発見しクラブへ向かう発言をしていたからです。
二重人格で浮気癖のある男が捉える不安や抑圧への不満。
それが蜘蛛として表現されており、決別したかに思えたが蜘蛛の巣として僅かに可能性を残してしまっています。
決別したかに思えても過ちを繰り返す、という皮肉がこもったメッセージだったのではないでしょうか。