この描写があった真意とはなんだったのでしょうか。
せっかく言えた気持ちを、気恥ずかしさでやっぱりまたいつか、としてしまうのは、蘭も恋愛に関してはまだまだなことの表れ。
歩美ちゃんに対する新一の鈍感さもそうで、新一と蘭が似たもの同士ということがわかる微笑ましいシーンでもあるのです。
ここは二人の進展を少しだけ予感させつつラブコメ要素も忘れず、綺麗に着地させたとみることができるでしょう。
監督が変わってもいつものコナン作品だ、というファンへのメッセージでもあったのかもしれません。
守ったものと守れなかったもの
犯人の守れなかったもの
仕事道具を犯行に使用した犯人を、小五郎は一喝します。
今のあんたに、プライドなんて言葉を使う資格はねえ!
引用:銀翼の奇術師/配給会社:東宝
その言葉にはっと気づいて泣き崩れる犯人。
本当に守りたかったのがプロとしてのプライドだったのかどうか、考えさせられる場面です。
一方、キッドは「お宝をいただく」ことが目的であり、殺人に手を染めることもありません。
コナンに銃を向けた際も、発射されたのはトランプ。命を狙うような真似はしませんでした。
ポリシーを守るものと守れなかったもの、ここにも対比が際立ちます。
キッドが守ったもの
序盤、劇場で思わずコナンを助けようとしてしまったキッド。
彼は怪盗行為とは関係なく、大惨事を見過ごせるような人間ではないのです。
飛行機の墜落に際して、コナンに協力したのはキッドとしては自然な行動だったとさえいえるかもしれません。
そして自分を囮にパトカーを誘導するなど、彼にしかできない方法で事故を防ぎました。
キッドは、あくまで怪盗として人の命を守り、そして自分のポリシーも守り抜いたのです。
探偵と怪盗の対比
キッドが本当に求めているもの
キッドが求めているのはお宝と、それを盗む過程の推理合戦を楽しむこと。
パトカーを誘導し終えたキッドは、空を見上げてこう呟くのです。
あとは任せたぜ、名探偵
引用:銀翼の奇術師/配給会社:東宝
飛行機を任せて先に脱出したのも、相手の実力を信じていたからこそ。この言葉に偽りはないはずです。
コナンを助けたのは、そんな張り合える相手を失いたくないという心理もあったのだろうと考えられます。
そんな実力を認め合う両者だったからこそ、解決することが出来た事件だったといえるでしょう。
秘密を共有する二人
そして、またキッドも正体を隠して暗躍する身。
もしかすると、コナンと自分を重ねてみている部分もあるのではないでしょうか。
そういう意味では、二人はライバルでありながら秘密を共有する共犯者でもあります。
新一に変装して周囲にちょっかいを出した理由も、悪戯好きの彼らしい一面だと考えたら、キッドが更に魅力的に思えてこないでしょうか?