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映画「ゴーストランドの惨劇」は『マーターズ』で有名なパスカル・ロジェ監督の最新ホラー映画です。
まるで対照的な性格の双子姉妹とシングルマザーを突然襲った悲劇は見る者を恐怖のどん底に叩き落とします。
一家を襲った暴漢達の暴力描写も不快感を煽るような描写ながら、決してただのグロ描写だけに終始していません。
また、巧みなストーリーテリングで幻想と現実を対比させながらの展開も秀逸です。
今回はその中からタイプライターを指さした意味を徹底考察していきましょう。
そしてなぜ母親は「ヴェラのいうことを聞くな」といったのか、この辺りも含めて本作の謎に迫っていきます。
タイトルの意味
本作を考察していく上でまずタイトルの意味を把握していくのが大事です。
果たして「ゴーストランドの惨劇」とは何を意味するのでしょうか?
二重構造
「ゴーストランドの惨劇」というタイトル自体はベスが小さい頃の実体験を元に作り上げた小説の名前です。
しかし、この小説は様々な意味で二重構造となっており、それが同時に前半の伏線なのです。
一つが「現実」と「虚構」の二重構造で、どこまでが現実でどこからが虚構なのかが終盤まで分かりません。
二つ目が「劇中劇」の二重構造で、ホラー体験そのものを小説という劇中劇としてまとめ直しているのです。
このような念入りな二重構造を仕掛けていくことで、受け手に敢えて違和感を持たせて不安を煽ります。
悪夢の再現
そしてもう一つの大きな意味はこの小説名自体が「悪夢の再現」であるということです。
本作を映像化する上でロジェ監督は「誰かの夢の世界を現実のように映像化すること」に重点を置いたと仰っていました。
その上で「悪夢」というガジェットが非常に有効に機能しています。悪夢の一番怖い所はそれが現実化した瞬間です。
誰だって現実に悪夢など起こって欲しくはありませんし、だからこそこのタイトルが余計に悍ましく感じられます。
対照的な姉妹
本作の小説にかけた二重構造を踏まえ、次は本作の軸となる二人の姉妹について見ていきます。
同じ家で育ちながら、自由奔放な姉と内向的な妹はそれぞれどのような運命を辿ったのでしょうか?
小説という空想に逃げたベス
上述したように、過去の惨劇から見事に逃れきって作家として大成したのは意外にも妹のベスでした。
彼女は元々文学少女として作家の才能を持っていたので、道を決めること自体は実はそこまで難しくなかったのです。
ただし、それは表向き喜ばしいことのようでいて、実は何の解決にもなっていなかったことが判明します。
突然綺麗な大人の女性のベスが登場しますが、これも彼女の空想が作り上げたまやかしだったのです。
陽気故に狂気に落ちてしまったヴェラ
内気ながらも作家として強い芯を持ったベスと対照的に、陽気で明るい筈のヴェラは地下室で恐怖に怯えていました。
普段陽気で明るいはずの彼女が何故こうなってしまったのか?それはヴェラが陽気な人間だったからこそです。
よく「光が強ければ強いほど闇もそれだけ強くなる」といいますが、ヴェラも陽気故に闇が深い人だったのでしょう。
そのヒントとなる場面は幾つか提示されていますが、代表的なのはベスばかり可愛がる母にきつく抗議するシーンです。