その愛をネビルは感じたのです。
更にタトゥとして体に蝶を入れるのは美の象徴ともいわれています。
ネビルによって実験されていたダーク・シーカーが元は美しい女性であったのことを示唆しているのかもしれません。
真の怪物とは一体誰なのか
観客の目にはダーク・シーカーが怪物として映ります。
しかし実際の怪物は彼らではありません。
真の怪物はネビルだった
公開バージョンから真の怪物を読み解くのは大変難しく、それは最後までネビルがヒーローとして描かれているからです。
しかし元々の別バージョンでは、ネビルこそが怪物として明確に描かれていました。
ダーク・シーカーが恋人を助けに来たことからも、彼らには知能や心があることがわかります。
最後まで、ダーク・シーカーたちの「心」に気がつかず、彼らに憎悪を向け実験台として捕獲し多くのダーク・シーカーを殺していったネビル……。
ダーク・シーカー達の立場からみたら、ネビルは自分たちを罠にかける恐るべき捕食者です。
ウイルス感染でダーク・シーカーになった犠牲者たちを、実験し殺していくネビルこそが真の怪物であるという観方も出来るのです。
科学者こそが怪物だった
そもそも、人間をダーク・シーカーに変えたのは科学者のアリス・クリピン博士です。
人を救うはずの薬がクリピン・ウイルスになったというのは、皮肉な話ではないでしょうか。
ウイルスを人工的に作りあげることが、いかに恐ろしいかをまざまざと示しています。
善意から生まれたとはいえ、クリピン・ウイルスは人間の傲慢さが生んだ産物だったのかもしれません。
科学者というものは、いつの時代も怪物を生み出す存在として描かれるものです。
異なるエンディングに隠された真意
二つのエンディングを持つ『アイ・アム・レジェンド』ですが、なぜ結末が差し替えられてしまったのでしょう。
公開版のエンディングが物語るもの
映画館で公開されたエンディングは、人類の望みである血清をアナに託し死んでいきます。
彼は人類にとっての英雄的なレジェンドになったのです。
ネビルの死は観客がすんなり納得出来る結末であり、自己犠牲という尊いものをメインに描かれています。
別エンディングが物語るもの
一方元のエンディングは、人間の心を残しているダーク・シーカーを捕獲し生物実験をしているネビルとして描かれています。
いいかえれば狂気の中で、生物実験をしている恐ろしいレジェンドの怪物です。
観客たちにとっては、これまで英雄として観てきたネビルが一転し悪者になります。
視点の逆転ともいえる展開は、考えさせられる展開だったのではないでしょうか。