引用:https://www.amazon.co.jp/dp/B011HJFD9K/?tag=cinema-notes-22
『博士と彼女のセオリー』はALS(筋萎縮性側索硬化症)のホーキング博士とジェーンの愛と絆の物語を描いた感動の実話です。
本作のラストシーンでは「見て、僕たちがつくったものを」と、ホーキング博士が音声合成装置にタイプした単語が表示されます。
それを見ると矛盾に感じるものが一つ。二人で協力して大々的な研究成果を残してきたのになぜ別れるのか?
二人で協力し合ってきたならば、別れる必要はないと思います。
確かに他の人を好きになってしまってはいますが、そんなに簡単なものでしょうか。二人の関係に謎は深まるばかりです。
ここではホーキング博士とジェーンの関係や、ALSという病気と本作との関係を見ながら、ラストシーンの考察をしていきます。
ジェーンとホーキング博士の関係を感情面から考える
ジェーンとホーキング博士は大学時代からの仲であり、互いに支え合って生きてきました。
ALSの影響を理解しつつ支えるジェーンと、支えのおかげで研究ができたホーキング博士がなぜ別れを選ぶのか。
普通別れる原因を感情面から考察すると、「すれ違い」や「価値観の違い」が挙げられます。この二人の間にそれらがあったのでしょうか。
二人はそもそも愛し合っていたのか?
本作の中ホーキング博士の気管切開が決まったシーンで、ホーキング博士はこのように語ります。
どこかへ行ってしまって、二度と戻らないでほしい
博士と彼女のセオリー/
配給 :ユニバーサル・ピクチャーズ,フォーカス・フィーチャーズ,東宝東和
これ以上ジェーンを苦しめられない、一緒にいると迷惑をかける、という思いからホーキング博士は言葉をひねり出しました。
この時のことをジェーンは、もうホーキング博士を愛しており、2年の余命に自分の人生を捧げるつもりだったと語ります。
つまり二人は窮地に立たされても、愛し合っていたのです。しかしここで注目することが一つ。
ジェーンはこの時ホーキング博士の余命は「2年」であると思っています。実際は余命より25年も長く生きてきました。
後述しますが、それが別れにつながったのかもしれません。
尊敬>愛という見方
離婚や恋人との別れを経験したことがある人ならば「冷める」感覚が分かるはずです。
本作ではジェーンとホーキング博士の間に、そのような感情は見えません。とはいっても「冷める」感覚はどこかあったはず。
だからこそ二人とも別々のパートナーを見つけるのです。結果、恋愛感情はなくなったかもしれませんが、尊敬の念は消えませんでした。
互いに支え合って一つのことを成し遂げるのに、恋愛感情は必要ありません。そこに必要なのは相手を尊敬する心。
そう考えると「僕たちが作ったもの」の言葉は、恋愛感情はなくとも尊敬し合ってきた、という意味で捉えられます。
ジェーンとホーキング博士の関係をALSという病気から見る
ALSは脳の「運動しろ」という命令が、運動ニューロンに伝わらず思うように体を動かせなくなり、最終的に死に至る病気です。
ホーキング博士は余命2年と宣告されていましたが、実際いつ死に至るのか分からない病気であり、常に人の介助が必要になります。
ここでは、その病気から考える「別れる原因」を考察していきます。