本作の脚本家アンソニー・マッカーテンは『ホーキング、宇宙のすべてを語る』を読んで、ホーキング博士に興味を抱きました。
さらにジェーンの回顧録『Travelling to Infinity:My Life with Stephen』を読んで、2人の物語を映画化したいと思い立ちます。
企画段階で何度もジェーンに猛アタックをし、監督のリサ・ブルースとともに3年もかけて映画化にこぎつけます。
アンソニーがそこまで力を入れようと思ったのはなぜでしょうか。
脚本家アンソニーのこれまでの作品から
脚本家のアンソニーは、難病を抱える人やその周りの人を映像化することにこだわりを持っています。
かつて脚本した作品に『デス・オブ・ア・ヒーロー』という作品がありました。この作品は主人公が末期がんらしき病気を抱えています。
作品内容は希死念慮のある主人公が女の子に恋をして、自身を見つ直すという作品です。
アンソニーはこのような「難病」と「その周りの人々」というテーマの作品にこだわっており、本作はそのテーマに当てはまります。
そう考えると本作が成功したのは、ALSやそれを支えるジェーンの姿勢がアンソニーを刺激したからだ、と考えられます。
ALSを扱った作品という視点から
『博士と彼女のセオリー』以外にもALSについて扱った作品は多数あります。
それらを見て面白いのは、2010年代になってALSを扱う作品が急増しているということです。
ALSの病気を世界に知らしめるため、といった大きな目的が映画界にあったのかは分かりません。
しかし少なからず世界がALSを知るきっかけにはなった、とすることはできるでしょう。
「周りで支える人との絆」「闘病生活」「余命宣告を受けたのちの生き方」──。
ALSをテーマに扱う作品には、これらのメッセージや内容が込められているのではないでしょうか。
『博士と彼女のセオリー』に見る、出会いと別れという人生観
ジェーンはジョナサンと結婚し、ホーキング博士もその後は看護師のエレイン・メイソンと結婚をします。
結婚後もお互いのことを尊敬し合いながら生きてきた二人。
ALSという病気がテーマでありながらも、それを超越した絆が象徴的な本作です。
結局ホーキング博士はエレインと離婚しており、2度目の結婚を失敗だったとまで考えていました。