セラピストのいった「自分の作ったレシピ」は、例え失敗してしまっても自分で決めた人生が一番だと語っています。
このシーンは、なかなか奥の深いやり取りです。
「ゾーイ」に込められたメッセージ
劇中で姉の子供であるゾーイは、その名前に強いメッセージ性が隠れています。
命という意味を持つ「Zoe」
劇中でゾーイは命という意味を持っていることが明かされていました。
本作『幸せのレシピ』で最も大きなテーマです。
冒頭から命の儚さを痛感させられ、残された者たちの生き方をリアルに描いているのです。
ゾーイの名前には、人の命の尊さと命というものが与える他者への影響力がこめらているのではないでしょうか。
ケイトを変えたゾーイ
ゾーイには「生きていく者」という意味もあります。
彼女が生きて行くことで、ケイトの人生は大きく変わりました。
子供は大人の思い通りには動いてくれないものです。
これまで全てを思い通りにしてきたケイトにとって、ゾーイとの生活は自分の価値観を大きく揺さぶられるものだったはずです。
自分のつくった檻の中で生きてきたケイトを、自由に羽ばたかせてあげたのはゾーイの存在だったのではないでしょうか。
リメイク版
『幸せのレシピ』は2001年公開の「マーサの幸せレシピ」をリメイクした作品です。
「マーサの幸せレシピ」はドイツ映画で、主人公は少々うつ病的な描写がされていました。
しかし本作では、明確なうつ病的描写はされていません。
自分に自信を持つ強気なケイトは、まさに現代の女性を象徴しているかのようです。
原作と本作、双方のストーリーはほぼ一緒なのですが、舞台となった背景が異なりそれぞれの魅力があります。
ふたつの作品を観比べるというのも、楽しみ方のひとつです。
完璧ではないケイトが魅力的な映画
本作では、完璧主義者のケイトが人と深く付き合うことで自分の生き方を変えていきます。
現代社会は、人との関わりが希薄になっているといわれていますが、彼女の生き方に共感できる人も多いのではないでしょうか。
人が生きていく中で、外れてはいけないレールなどないのです。
『幸せのレシピ』は完璧ではないケイトが、悪戦苦闘しながら幸せを掴み取るハッピーエンドが心を柔らかくしてくれる作品といえるでしょう。