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『南瓜とマヨネーズ』は漫画家・魚喃キリコの代表作を映画監督・冨永昌敬が実写化したラブストーリーです。
キャスト陣には臼田あさ美・太賀・オダギリジョーといった実力派が揃います。
美しくもどこか切ない映像が、日常的でありながら独自の世界観を織りなす傑作といえるでしょう。
この記事では映画のタイトル『南瓜とマヨネーズ』や、劇中歌『ヒゲちゃん』にこめられた意味を徹底的に解説しました。
またツチダがハギオとの別れを決めた理由や、せいいちとツチダのその後にも迫っていきます。ぜひ最後までご覧ください。
『南瓜とマヨネーズ』というタイトルの意味は?
映画のタイトルであるにも関わらず本作には南瓜もマヨネーズも登場しません。
このタイトルには一体どのような意味がこめられているのでしょうか。ヒントとなるのは映画のキャッチフレーズです。
わたしたちのこのありふれた平凡は 本当はとてもこわれやすくて なくさないことは奇跡
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
平凡でありふれた、しかしそれ自体がかけがえのない日々。この映画が描いているのはまさにそんな尊い日常なのです。
それを踏まえて南瓜とマヨネーズが意味するところを考えると「どちらも主役ではない」ということに思い当たります。
食卓に南瓜やマヨネーズが出ても特別感はありません。高級でもなければ珍しくもないふつうの食材・調味料だといえるでしょう。
しかし「そんなふつうの食卓こそが尊いものである」とこの映画は教えてくれるのです。
劇中歌『ヒゲちゃん』にこめられた意味とは?
せいいちとツチダは別居から数日後にライブハウスの楽屋で再会します。そのときせいいちが歌ったのが劇中歌の『ヒゲちゃん』でした。
この曲の歌詞にはどんな意味がこめられているのでしょうか。ここからは劇中歌の意味について徹底的に解説していきます。
せいいちはツチダに歌を聴かせにきた
「お前のために書いたわけじゃないから」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
せいいちは『ヒゲちゃん』がツチダのために書いた曲ではないと言い切ります。
「いや、あのー、深い意味ないから」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
ふだんは多くを語らないせいいちが、ここまで念を押すのはむしろ照れ隠しと考えるのが自然でしょう。
『ヒゲちゃん』はツチダのために書いた曲だったのです。その証拠にわざわざ田中のバーを閉めてまでツチダに曲を聴かせにきました。
童謡『犬のおまわりさん』との関連について
『ヒゲちゃん』のキーワードは「猫」そして「迷子」の二つです。
この二つが歌詞に登場する曲といえば、日本人の多くが童謡『犬のおまわりさん』を連想するのではないでしょうか。
劇中歌について深く理解するための鍵は実は『犬のおまわりさん』が握っています。念のため『犬のおまわりさん』の歌詞を確認してみましょう。
迷子の子猫ちゃんに犬のおまわりさんが名前や住所を尋ねますが、子猫ちゃんは泣いてばかり。犬のおまわりさんには名前も住所も分かりません。
この曲で表現されているのはずばり「コミュニケーション不全」です。
当たり前ですが、猫と犬は別々の言語(なき声)を使います。子猫ちゃんが何を言おうと、犬のおまわりさんに分からないのは当然なのです。
そして犬のおまわりさんは困ってしまって「わんわんわわーん」となきます。
子猫ちゃんからしても(そして私たち人間にも)犬のおまわりさんが何を言っているのかは分かりません。
せいいちとツチダのコミュニケーション不全
本題に戻りましょう。せいいちの『ヒゲちゃん』は『犬のおまわりさん』へのアンサーソングに他なりません。
犬と猫のコミュニケーション不全と同じことが同棲中の二人に起こったのです。
スランプ状態のせいいちに向かってツチダは自分の気持ちを一方的に押し付けました。