そこで繰り広げられるドラマにはどんな意味があったのでしょう。
誕生時間の優しい嘘
コミカルな展開で、ストーリーに変化を与えてくれていた“出産競争”。
しかし結局最後に、テス夫妻は出生時間について嘘をつきました。この理由はなんだったのでしょう。
生まれる直前、テスの夫は、相手に既に二人の子供がいることに気づきます。
これによって、本当に大切なのは賞金ではなく、新しい命を喜びで迎えることだと思い出したのではないでしょうか。
出生時間を尋ねられ、顔を見合わせたテス夫妻は、ただ笑顔でした。
既に張り合う気持ちは消えてしまっていたのでしょう。命の誕生が、優しい気持ちを取り戻したのです。
多くのドラマが生まれる場所
スタンが最期を迎え、テスたちが新たな命を授かった場所。どちらも病院です。
ここは命が終わり、同時に、始まる場所でもあるのです。
新生児室、生まれたばかりの新しい命は希望に満ちています。
ようこそ 世界へ
引用:ニューイヤーズ・イブ/配給会社:ワーナー エンターテイメント ジャパン
この言葉はクレアにも向けられたものだったのかもしれません。涙に暮れていた彼女にも笑顔が戻りました。
病院とは、人間模様を描くうえでこの上なく象徴的な場所だと言えるでしょう。
看護師エイミーのビターエンド
病院には、ハル・ベリー演じる看護師エイミーもいました。しかし彼女の恋人はパソコン画面の向こう。軍人です。
新年の華やかなお祭りの裏側でも、戦地に赴いている人や、それに心を痛めている人がいる。
それを忘れてはならないというメッセージなのかもしれません。
同時に、愛にはとても脆い一面もあるという、切ないものも感じさせるシーンでした。
エイミーの存在によって、物語には甘く優しいだけではなく、ほろ苦さも加えられているのです。
ニューイヤーズ・イブ 希望と愛の大晦日
大晦日のニューヨーク。改めて、ここで繰り広げられた物語の意味を考察します。
ここから始まる彼らの未来
現実には辛い出来事は沢山起こります。ですがエンディングで描かれるのはそれでも希望を信じる人々の姿です。
パーティに連れてこられてもまだ硬い様子のミシェル。完全にはジェンセンを許してはいない様子のローラ。
彼らは少しずつ手を取り合って踊り始めます。前に向かうことを決めたのです。
ダンスに興じる人々の中には、あんなに頑なだったランディの姿も。
これから物語が希望に向かっていくことを示唆しているといえるでしょう。
どうか愛を忘れずに
トラブルが発生した際のクレアのスピーチも印象的でした。
新しい年はあなたに チャンスをくれます
過ちを許し もっと努力し もっと与え 愛するチャンスを
優しさを思い出しましょう 思いやりを引用:ニューイヤーズ・イブ/配給会社:ワーナー エンターテイメント ジャパン
これを聞き、人々はそれぞれの大切なものに思いを馳せ、新年を迎えたことでしょう。
厳しく辛い現実の中でも、どうか愛を忘れずに。
この映画が、リアルなイベントを舞台にした背景にはそんなメッセージも込められているのかもしれません。