もう、この台詞が1900の全ての心情を物語っています。
彼にとって、ピアノは人生を捧げた全てで、街は自分が生きていく場所ではないと思ったのです。
そして船でピアノを弾く事にこそ1900には意味があったのだといえます。
船を下りることに多少の怖さもあったでしょう。陸は彼にとって魔物が住んでいる街のようにも映っていたといえます。
彼は純真無垢といっても過言で無いほど純粋で、船と運命を共にする事が自分の人生だ、と考えていたのです。
ピアノ演奏対決シーンが作品に及ぼす影響
ジャズを生み出したと呼ばれるピアニストのジェリー・ロール・モートンが、1900の噂を聞きつけピアノ演奏での決闘を申し込んできます。
このピアノ演奏対決シーンが作品に及ぼす影響とはどういうものなのでしょう?
そこを紐解いていきましょう。
1900のピアノへの情熱
1ラウンドでは対決とはどういうものなのか、様子がわからない印象を見せる1900。
ジェリーのピアノの腕を誉めるなど、どこか他人事のようです。
しかし、2ラウンドでジェリーの弾いた曲を一度聴いただけで完全にコピーしてしまうなど1900はその天才ぶりを見せつけます。
そして3ラウンド目でジェリーが音楽を愚弄した事に腹を立てた1900は、超絶的なピアノの技で完全にジェリーを負かすのでした。
これは1900がピアノを心から愛しており音楽を冒涜するものは誰であっても許さない、というピアノへの愛情や情熱が詰まったシーンです。
そしてこのシーンは作品の最大の見せ場、といってもいい程この映画内において重要な役割を果たしています。
今まで船内で他のピアニストを知らずに生きてきた1900にとって、ジェリーの存在は“ピアノが好きだ”という事を再確認させる重要な人物となったのです。
そして1900の感情の高ぶりと共に、作品内においても重要な盛り上げどころとなるシーンとなっています。
周りの人物も1900の才能を改めて実感した
ピアノ対決に見事勝利した1900を皆が胴上げするシーンがあります。
1900が音楽への愛情を再確認したように、周りの人も1900のピアノの才能を改めて実感し、彼の才能に惚れ直したのです。
このシーンにおいて、二人の対決を周りで見ている人物は非常に重要な役割を果たしています。
演奏が気にいらなければブーイング、最高であれば褒め称えるという風に映画を観ている観客目線のような役割を作品内で果たしているのです。
作品において映画を観ている人物を感情移入させ、物語に引き込ませる重要な位置関係を担っています。
1900の純粋さが際立っている
1900の感情を紐解くと、彼にとってはピアノの対決などあまり意味をなさないものだったのです。
彼が本気になったのはあくまでもジェリーが音楽を冒涜するような弾き方をしたからでした。
周りの人物の評価や、富や名声など1900にとっては興味の無いものだったのです。
ここが映画の作品内において、1900の純真無垢さが際立っているポイントと呼べるでしょう。
そして彼が“ピアノが好きだ”という事を改めて実感させてくれる、作品内において非常に影響力の高いシーンとなっているのです。