しかし、キッドの手による飛行機事故で芦屋のひまわりが危険に晒されたことにより、次郎吉の信頼は失墜しました。
つまりこのままでは美術展は開催されず、ウメノさんに芦屋のひまわりを見せることが出来なくなります。
キッドとしては、どうにかして美術展を無事に開催させる方向へと持っていく必要があったのです。
次郎吉の信用回復の為
美術展の開催において必要不可欠になるのは、次郎吉の信用回復です。
次郎吉にひまわりを預けても大丈夫だと証明することが出来れば、彼の信用は回復することが出来るでしょう。
キッドは自ら悪役を買って出て、5枚目のひまわりを奪い去ったのではないでしょうか。
そしてあえて、派手な100億円ショーをマスコミの前で見せつけるわけです。
キッドがわざとマスコミを呼び寄せたことは直接明言されていません。
しかしマスコミがホテル前に集結したシーンは、キッドが現金を要求した意味が暗示されています。
怪盗キッドの意外性が魅力的
本作で怪盗キッドは、らしからぬ行動を次々に起こしています。
怪盗キッドには何か裏があるのだろうか…、と観る者は不信感を感じミステリー要素が強まりました。
紳士を貫く姿
劇中でらしからぬ行動をしていたキッドですが、実は「愛」の為の行動だった…。
いかにもキッドらしい理由です。
観客を裏切る行動をとりつつも、最後はしっかりとかっこいい姿を観せてくれました。
飛行機の爆破や鈴木次郎吉の殺害未遂などを、キッドの行動として観客をミスリードさせる演出はさすがです。
そうすることで、キッドの凶行の謎という大きな推理を取り込んでいるのです。
キッドの行動や動機を終盤まで謎のまま留めておくことによって、映画に重層性が生まれているのでしょう。
彼とチャーリー警部のやり取りは、双方の器の大きさを感じさせる名シーンとなりました。
視点人物としての江戸川コナン
主人公である江戸川コナンは、今回あくまでも視点人物として描かれていました。
コナンの役割は何も知らない視点人物としての色合いが強くなっています。
観客は、コナンと同じ視点でキッドの行動の真相や絵画を巡る事件の真相へと迫っていくことが出来るのです。
一緒に真実を追いかけることで、臨場感を大きく感じるのではないでしょうか。
怪盗キッドが人気を高めた作品
劇場版『名探偵コナン 業火の向日葵』は、怪盗キッドの魅力が詰まった作品です。
劇中でキッドの取った行動には、いくつか謎が残されたまま物語は幕を閉じてしまいました。
改めて細部に注目して本編を観返してみると、キッドの行動に隠された謎にもしっかりとヒントが隠されていることが分かります。
また「七人のサムライ」など黒澤明監督へのオマージュも組み込まれていました。
一度目とは少し違った観点から作品を観返してみると、本作をさらに楽しむことが出来るかもしれません。