そして街中の名所をバックにディックが魅力的なスチル写真を撮りまくります。
「北駅」駅頭のシーン。アンナ・カレーニナのようにね、ディックはジョーの元に歩み寄り、いきなりキスを。
このキスの意味は? ディックはまだまだジョーの固さを取るための手段としてキスを使っているようです。
するとディックの指示を受けている内にジョーの目から涙が。ジョーの涙は別項で分析しましょう。
教会裏の小川のそばでのキス
市内の撮影は順調に進み、最後はウェディングドレスでの撮影でした。ジョーは教会の裏に行き、そこでの撮影となります。
この写真のシチュエーションを説明している時、ジョーは自分からディックにキスをし、ディックも返します。
そして、ジョーは言うのです。
パリも このドレスも 教会も あなたも愛している
引用:パリの恋人/配給:パラマウント
ここに至ってディックはようやくジョーが自分を深く愛していることに気がつくのでした。
ここで歌われる「He Loves and She Loves」は、ようやく二人の愛が重なったことを歌い上げています。
しかし、ジョーの心にはまだフロストル教授に憧れる「共感主義」が、どこかに残っていたのです。
“ S’ Woderful ” を歌いながらエンディングのキス
発表会から抜けできたジョーとアメリカへの帰国を急遽止めてジョーのもとに駆けつけたディック。
撮影で二人が愛を確かめあったあの教会の裏庭の小川のそばでこの映画のテーマ(ス・ワンダフル)をバックに歌い踊ります。
そして大団円のキス。もつれていた二人の愛は整理されて新しい旅立ちを迎えたという大ハッピーエンディングのキス。
いわばこの映画のすべてを物語るキスといえるでしょう。
「涙」
2つ目のメタファーとしての「涙」について考察していきましょう。主人公の女優には涙を簡単に流させるものではありません。
街中での撮影中の涙
発表会を前に、一度はフロストル教授の元へいくために準備のリハーサルをすっぽかしたジョー。
ディックに諭されてモデルとしてやっていくことを決意し見違えるようになったジョーの美しさにスタッフ、撮影隊はびっくりします。
その後、パリの街中での撮影が展開されるのですが、先述のように駅頭のシーンでジョーはいきなりディックからキスされます。
ディックにしてみれば、演出の喝入れのつもりだったでしょう。
しかし、ジョーにとって心はすでにディックに大きく傾いています。それを彼が気が付かないこと、それに対する涙ではなかったでしょうか。
発表会での涙
ジョーの心がフロストル教授から離れず、モデルとしての覚悟もないジョーに愛想をつかしたディックはNYに帰ろうします。
しかし、ジョーは本番の発表会に出場し、見事に努めを果たします。ウェディングドレス姿の彼女の目からは大粒の涙が。
この涙こそ、ジャックの愛に応えられなかった自分を責め、ジャックの愛を失ってしまった事への悔しさからの涙だったと読めます。
フロストル教授に誘惑されたジョー
ディックの愛を信じているいっぽうで、ジョーはフロストル教授の「共感主義」から離れることが、なかなか出来ません。
教授に誘われるまま、彼の部屋に入ったジョーに教授は体の関係を迫り、「キス」をしようとします。
ディックからフロストルは、下心ありありだと教授のジョーに対する本音を警告されていたのに。
ここに至ってジョーが教授の部屋に入って来たのは下心ありを知っていて、敢えて自分のフロストルに対する傾きを測ろうとしたように見えます。
ディックへの愛とフロストルの「共感主義」のバランスが取れれば最高だからです。