犯人の動機を聞いて「たったそれだけの動機でこんなことを仕掛けたの?」と思う人も多かったのではないでしょうか。
ゆえに、真の目的である奈良の仏像窃盗にたどり着くのは困難だったでしょう。
それでも江戸川コナンが真の目的に気づけたのは、どんなに小さなことも見逃さずに分析する能力があるからなのです。
殺人事件は起こらない
武装グループが登場したのであれば、話の流れ的には殺人事件が起こりそうなものです。
しかし本作ではコナンシリーズに珍しく殺人事件が起こりません。
テロリストがバイオテロを遂行しなかったのは、目的を達成できればよいので殺人は必要なかったのです。
狂気に満ちた愉快犯だったならば、あるいはバクテリアを実際に巻いていたかもしれません。
劇中では本当に殺人バクテリアがまかれるのでは、という恐怖で人々を煽り船内がパニックになるシーンがあります。
これは、昨今のリアルな世界情勢を彷彿させるシーンといえるのではないでしょうか。
殺人でなくても、人々を脅かす驚異は他にもあるというリアルな世界にも起こり得ることを表現しています。
飛行船内でのウイルス感染の真相
飛行船内で殺人バクテリアが本当にまかれていると思わせる場面は緊張が走ります。
発症者の状況を冷静に分析しているコナンの姿は、彼の冷静さを現していました。
テロリストや発疹発症者、そして発疹の発症箇所が…と細かい観察からの推理はお見事です。
観ている者がうっかり見逃しそうな場面ひとつひとつが、この物語の伏線となっているのです。
パニックを最小限に抑えたコナンの推理
飛行船という密室で殺人バクテリアがまかれているのでは、という状況になれば間違いなくパニックが発生します。
しかしパニックを起こしたのは「赤いシャムネコ」の犯人のみでした。
たったひとりのパニックが船内を支配し、いわばこの時点でハイジャックされたといっても過言ではないでしょう。
この人物をよく観ていると、明らかに怪しさ満載な行動が随所にちりばめられています。
しかし、それは犯人だと判明してから観た場合…。
どんなに些細なことでも目をつけ、推理し確信に変えていくコナンの洞察力には脱帽です。
殺人バクテリアが飛行船にある意味
犯人が殺人バクテリアを飛行船に仕込んでいると思わせたのは、どうしても飛行船に注目してもらいたかったからです。
怪盗キッドの話題だけでは世間の目をすべて惹きつけられないと思ったのでしょう。
だから、殺人バクテリアが空からまかれるかも知れないという人々の恐怖心を煽り、飛行船から目が離せなくなる状況を作ったのです。
恐怖心をコントロールすることで、目的を達成しやすくする環境は整ったのです。
本来の怪盗キッドではない演出
名探偵コナンシリーズでは怪盗キッドが出てくる=怪盗キッドがお宝を盗む、が事件の本流になるはずです。
しかし本作では少々捻りの効いた展開となっています。
「お宝を盗む」がメインじゃない
本作ではテロリストの事件が起こるので怪盗キッドの「お宝を盗む行為」は少々影が薄く感じます。
キッドはコナンと共闘援護しており今回は味方に徹するのかと思いきや、その行動もキッドにとって演出的な意味があったのです。
キッドがコナンを援護
本作ではキッドがコナンを援護する場面が多く出てきます。
中でも印象的なのは、コナンが飛行船外へと放り出されたシーンで、この時もすかさずキッドが助けていました。