アパートの向かいに住むゲイの老人イラストレーターがアセットは人間ではないからと、助けることに躊躇すると、イライザはこう言います。
助けないなら私たちも人間じゃない
引用:シェイプ・オブ・ウォーター/配給:20世紀フォックス
このセリフこそ、本作を代表する言葉といえるでしょう。
様々な愛のかたち
この映画にはイライザとアセットを始め様々な愛の形が描かれています。
障害者、ゲイ、黒人そしてモンスター
イライザのアパートの部屋の向かいに住む老イラストレーター、ジャイルズはゲイです。そしていつも行くカフェのバーテンに密かに恋しています。
その恋は酷い破れ方をしてしまいます。
秘密研究所の黒人の掃除婦仲間ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と旦那のお互いの理解のズレも一つの愛の形として示されます。
ジャイルズとイライザ、イライザとゼルダの間にある「友愛」。
そしてアセットを研究をするロシアスパイのロバート・ホフステトラー博士が最終的に見せるアセットへの「愛」。
ストリックランドの「家族愛」も愛ではある
ストリックランドは家庭では妻と子供を愛するパパであると描かれます。
いずれの愛も正しいとか正しくないとかいえない自由で固有なものであって、それは水のように形を持たないもの。
愛の形はそれぞれであって、どれが駄目でどれが良いと他人がとやかくいう筋合いのものではないのだ、という主張と読み取れます。
但し、ストリックランドの妻や家族に対する愛情は別の意味も含んでいます。そのことは後ほど触れます。
The Othersへの思い
この映画には白人以外の人々として、黒人のゼルダ、ゲイのジャイルズ、言葉が不自由な(障害者の)イライザが登場します。
極めつけは人間ではない異形の半魚人アセットです。
彼らは体制と古い概念、優しさの欠落のメタファーであるストリックランドから酷い仕打ちを受けます。
ストリックランドはアメリカ軍のアセットのプロジェクトの責任者。
水陸両用の生物を冷戦下で武器化出来ないかというプレッシャーに晒されています。彼はゼルダらthe othersを人間と認めていません。
一方で家に帰れば優しいパパであり、新車を買うことに浮き浮きする普通の側面も描かれています。
これは当時のアメリカの一般的な白人男性のステレオタイプとして描かれていると見て取れます。
そんな状況を含め、監督は現在のアメリカで起きている様々な不寛容な出来事に警告を発していると受け止めることが出来るでしょう。
これは「愛」と共にこの映画を貫く大きなテーマとなっています。
イライザとアセットは何者だったのか
先述のようにイライザの周辺にはさまざまなシーンで「水」が意識されています。
イライザの不思議
イライザは自分が川に捨てられていたと説明しています。
そしてラストでは首の傷がエラのようになり水の中で生きていけることが表現されました。
雨の日に彼女がバスに乗っている時、窓を流れる雨を指でコントロールする様子が描かれます。。
更に、アセットを海に帰す日の計算などを考え合わせると、イライザはもともと人間ではなかったのではないか、と思えてくるのです。