出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00H1GZKZG/?tag=cinema-notes-22
“Fargo”は、映画好きの方に支持されているコーエン兄弟の代表作で、1996年のアカデミー賞7部門にも登録されています。
マイマックな映画好きでない方からすると、もしかしたらこの作品は「よくわからない」で終わるかもしれませんね。
ブラックヒューモアに満ちたこの作品の面白さを、細かく見ていきたいと思います。
ただの陰惨な事件ではない
これはノースダコダ州で身代金目的に誘拐が企てられ、意図せず殺人の連鎖が起こってしまったというのがストーリーの本筋ではありません。
ミネソタ州で起きた実際の殺人事件が元になったフィクションだとも言われてますが、それはしかけであって、やはり本筋ではありません。
ファーゴに描かれているのは、殺伐とした生活と、詰まらない人生に対する強烈な揶揄です。
アメリカ社会の本当の闇
雪に包まれた風景の中で、一般的な家庭の生活が描かれていますが、見ているものの心を虚しくさせるシーンが連続しています。
魅力のない家族
主人公のジェリーにしても妻のジーンと息子にしても、何かにチャレンジするわけでもなく、何かの困難に直面しているわけでもありません。
とくにジェリーは、うだつがあがらず、義父の支配下にあり、家族を守っている実感もないようです。
義父はパワフルですが、貪欲なテストステロンの強い男性であり、その他に情緒的な魅力は一切見えてきません。
誘拐に関わることになる、2人組にしても、修理工場の作業員にしても、警官たちにしても、文化的な素養が全く見られず、のっぺりとしています。
生理的欲求を満たす行為を繰り返す日常が、淡々と続いていく雪に包まれた景色に、見ている側も陰鬱な気分が移ってきそうです。
金満社会
狩猟社会のように、強いものが金を支配し、それ以外は肩身の狭い思いで生きていく構図ができています。
ジェリーは、情けない男で、その場その場をごまかし続けているだけで、男としてのプライドがないかのようです。
仕事にもプライドはなく売り上げのために嘘も重ね、損失を隠そうとしますが、それは長期的には信用を失うだけの行為でしかありません。
浅はかな人物なのが、ストレスを物にぶつけるシーンでよく現れています。
解決策を見出せないから、不満をため込んで、薄ら笑いでごまかして、隠れて暴発するしかできないのです。
ジェリーの軽い存在感は、知性の低い人間の特徴をよく表しています。
きっと結婚のときも、金持ちの娘だからと安易な考えだったのだろうなと推測できます。
金で買われた男は、金で苦労しているのですが、これは現代の社会の多くの人にも身につまされるところでしょう。
皮肉の物語
ストーリーの要所、要所に出てくるシーンに皮肉が込められているようです。
登場人物が、訛りなのか間の抜けた喋り方なのも、烏合の衆を揶揄した表現のように受け取れます。
食生活
マージが夫ノームとビュッフェ式のランチを摂るシーンは、ロマンチックさのかけらもありません。